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向精神薬擬人化その26:レメロン(リフレックス)
超絶久しぶりに擬人化キャラを作ってみました。

抗うつ薬という時点で既に向精神薬の範囲から外れている
気がするんですが…久々に出た新規薬理の薬なので
応援の意味も込めて。

日本ではリフレックスの方が有名のような感じですが
一応オルガノンが売り続けてきた薬だし、シェリング・プラウ出身の
キャラっていないなー、ということでレメロンの方になりました。

向精神薬擬人化その26:レメロン(リフレックス)_f0133373_14373240.jpg
一般名ミルタザピン。
規格は15mgオンリー。
愛称は「れめる」。

彼女の所属するDクラスは、
学園で最もトレンドな薬が集まっており、
所属するキャラも文理共に優等生が多い。
れめるは理系の方で、
化学と生命科学担当の研究職員、
という設定。


なので服装は白衣ベース。白衣とタートルネックって合うよねーという
事で服装もすんなり決まりました。白衣の青と赤はヨゴレではなく
シェリング・プラウ社の外箱イメージ。

シェリング・プラウの錠剤に刻印されているシビンのようなマークは
MRによるとどうやらフラスコらしいので、とりあえず右手に
持たせて見ました。左手には生命科学の象徴たるマイクロピペット。
白衣のポケットにはキムワイプも常備していますwww

首からぶら下げているのはシェリングパパからもらった社章型メガネ。
つぶれて見づらいですがちゃんとSとPになってます。
極度の近視なのでパパからプレゼントされましたが、正直かっこ悪いので
必要に迫られたときしかかけないようにしているようです。

NaSSAというややこしい薬理を持つためか、クラスで最も頭がいい。
しかしオランダ生まれのアメリカ育ちなため、日本語はたいそう苦手。
独特な比喩や省略、勘違いや思いこみも交えて話すため、彼女の言葉は
極めて難解。いろいろ良いこともしゃべっていると思うのだが、何か
眠たい話だったという印象しかみんなには残らないという、
校長の朝礼スキルを有する。

かつて一度来日し、入園試験を受けたことがあるのだが、あまりに酷い
日本語だったため不合格になった。そのためしばらく海外で活動していたが、
彼女の優秀さを惜しんだ日本の明治おじさんの口利きによって再度
入園試験を受けることになる。「日本人はとりあえずNaSSAの技術と言えば
みんな納得するよ」と言われ、その通りにしたら本当に合格してしまう。
日本人のNASA信仰を知らない彼女は、ただ首をひねるばかりであった…とさ。

性格はクールでおとなしいが、結構溜め込むタイプで、キレると優等生の
仮面をかなぐり捨てて怒鳴り散らす。
「ニューロンの尻に手ェ突っ込んでシナプス小胞ガチガチいわしたろか?」
なぜか罵声は流暢。そしてその内容は正しくレメロンの薬理作用。

Dクラスの研究は全て助教授であるとり乃(トリプタノール)によって
牛耳られており、全ての論文はとり乃の主導によって行われている。
れめるの見識や技術はとり乃に匹敵するものの、そのキャリアと日本語力に
おいて遙かに及ばず、入園してからひたすら資料作成とアセトン洗浄と
ピペット土方を押しつけられている。
彼女のストレスは日に日に増大しており、下克上を着々と狙っているとか。

キャラが(薬理作用が?)被らないせいか、温厚なお嬢様SSRIであるぞふぃー
(ジェイゾロフト)と仲がよい。しかしぱき子(パキシル)との仲は最悪に近い。
次世代抗うつ薬の名を汚す駄薬と思っている様子。

家族として、姉のてとら(テトラミド)が存在する。ぽややんな巨乳。
妹とは対照的に日本に馴染んでいるが、馴染みすぎて影が薄い。

れめる以降、デキのいい娘が生まれなかったオルガノン家は次第に
落ちぶれてゆき、とうとうシェリングプラウ家に身売りすることになる。
学園に対しコネクションの無かったシェリングパパは、れめる姉妹を非常に
歓迎しているが、コテコテの関西商人である彼をれめるはあまり好きでない。




外資系の薬にしては珍しく、レメロンという商品名の由来はハッキリしています。
ラテン語の格言「Luctor et Emergo」(苦労するが、やがて苦境から抜け出す/
冬来たりなば、春遠からじ)から来ているとのこと。ちょっと格好いいですね。
ゾロフトもそうですが、ラテン語由来の名称は西洋の歴史を感じられて好きです。
リフレックスとかいうフィットネスクラブみたいな名前よりは重みがありますね。

レメロンはその構造上、四環系抗うつ薬に属します。と言うより、その構造式は
テトラミドにそっくりです。どこが違うかとよく見てみると、ベンゼン環の炭素が
一個置換されて窒素になってるだけです。従って、薬理作用もテトラミドに割と
似ています。1日1回眠前服用という用法も同じで、臨床力価もだいたい同じ。

テトラミドは1966年に開発され、マイナーな抗うつ薬としてそれなりの地位を
得ました。三環系抗うつ薬の副作用を克服すべく開発されたテトラミドですが、
効果は三環系に及ばない上に眠気は同レベル以上、と人気ない理由を揃えており、
レスリンと並んでうつ患者用の睡眠薬、という不名誉なポジションにあります。

「俺たちは睡眠薬を作りたいんじゃない!抗うつ薬を作りたいんだ!」という
熱意を元に、オルガノンはテトラミドの改良品を模索し続け、辿り着いたのが
レメロンです。レメロンは94年にオランダで承認後、新規抗うつ薬として世界で
評価を得ました。当然日本での販売も期待されており、1987年より
日本オルガノンで臨床試験を開始、2000年には日欧共同でルボックスとの
二重盲検比較試験が行われました。

しかしコレが裏目に出ます。日本人の治療結果はルボックスに勝ったものの、
白人での治療結果はルボックスに逆転されてしまいました。新薬の申請が厳しい
日本でこの試験結果は芳しいものではなく、予算の乏しい日本オルガノンは
承認申請を断念してしまいました。

2004年、世界でレメロンが新規抗うつ薬として定評を受けていることに着目した
明治製菓は、日本オルガノンに対し共同開発を持ちかけます。比較的体力のある
明治は海外治験データに頼った6週間の短期試験ではなく、52週間に及ぶ日本での
長期投与試験を行うことが可能でした。これにより安全性と長期服用による
薬効持続性が担保され、晴れて製造承認を得られたのです。

テトラミドの流通販売をほとんど三共が行っていたのと同様、明治としては
レメロンの販売を独占したかったはずです。しかしここで横槍が入ります。
2007年、オルガノン社はシェリング・プラウ社に吸収されたのです。
当然ながら旧オルガノン社の製品はシェリング・プラウ社が管理することに
なります。日本オルガノンに比べれば営業力も販売力も桁違いなシェリング・
プラウがレメロンを放っておくハズもなく、ごり押しの様な感じで併売に
なってしまいました。残念!

でも明治はデプロメールやメイラックスを通じて精神科領域にコネクションを
付けているので、精神系の薬を持たないシェリング・プラウに比べれば日本での
販売はしやすいと思います。頑張れ明治!
…でも擬人化はシェリング系だったりするのだが。

最近の抗うつ薬はSSRI、SNRI、SARI、RIMAなど様々な略称を付けられてますが、
レメロンも例外ではありません。それもNaSSAという最もややこしい名称です。

NaSSAとはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略で、
直訳すると「ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬」です。
読んで字のごとく、ノルアドレナリン神経と、「特異的な」セロトニン神経を活発化
させるのです。より具体的に言えば、前シナプスのノルアドレナリンα2受容体
および、後シナプスのセロトニン5-HT2A/C・5-HT3受容体を遮断します。

前シナプスにおけるノルアドレナリンα2受容体は、ノルアドレナリンの分泌を抑える
働きを持つ自己受容体なので、これをブロックするとノルアドレナリンの放出が
促進されます。α2受容体はセロトニン神経にも存在するので、セロトニンの放出も
同時に促進されるようです。

セロトニンは不安を惹起したり抑えたりする厄介な物質ですが、後シナプスにおいて
5-HT1受容体に結合すると不安抑制、5-HT2受容体に結合すると不安惹起に
働きます。しかしレメロンは5-HT2受容体を遮断するので、シナプス間隙に貯まった
セロトニンは必然的に5-HT1に多く結合することになり、抗不安効果を示します。
前シナプスにおいてノルアドレナリンの放出が増えても不安症状が引き起こされない
のは、この効果によるのでは無いかと思われます。また5-HT3受容体は吐き気や
下痢などの消化器症状を引き起こす方向に作用しますが、これを遮断することで
それらの副作用が軽減されるわけです。この選択性が「特異的」なのです。

作用部位はややこしいですが、それらは全て抗うつ効果として都合のいい方面を
持っており、効率よくノルアドレナリン/セロトニン神経を活発化させるのです。
流石NASAの技術!(違

…実は構造式がほとんど一緒であるテトラミドも、レメロンと同じくα2・5-HT2/3
受容体を遮断しています。でも抗うつ効果は明らかにレメロンの方が強いです。
その違いはどこから来るかと言えば、テトラミドは前シナプスセロトニン神経の
α1受容体をも遮断してしまうんです。

セロトニン神経におけるα1受容体は、ノルアドレナリンの刺激を受けることにより
活発化し、セロトニンを放出する方向に働きます。これが遮断されると、
ノルアドレナリン神経からセロトニン神経に働きかけることが出来ません。
SSRIでも分かるように、抗うつ薬のキモはセロトニン神経の活発化にあるため、
テトラミドは抗うつ薬として評価が低いのです。

ノルアドレナリンとセロトニンを増やすというならSNRIと同じでは?
と思うかもしれませんが、SNRIが「再取り込み阻害」、つまり神経を活発化させる
のではなく排出口をせき止めてセロトニン/ノルアドレナリンが貯まるのを待つ薬
であるのに対し、NaSSAは直接神経を活発化させる薬なのです。この違いは
効果の早さに現れます。レメロンは服用後から効果が出始めるのが他薬に比べて
かなり早く、投与1週目から変化が出る事もあります。アモキサンに次ぐ即効性と
言うことですが、この言い方はむしろアモキサンの底知れなさが際だつ表現ですね。

薬理作用的にSSRIと被らないので、併用することで相乗効果が見込めることも
レメロンの利点です。レメロン+ジェイゾロフト+セディールというキレイな重ねがけも
今後出てくるかもしれませんね。セディールは要らん子かも知れませんが…。

ムスカリン受容体への作用が弱いので、三環系にみられる口渇・かすみ目などの
厄介な抗コリン作用も少なく、SSRIに比べても、5-HT2/3受容体遮断により
性機能減退・消化器症状がほとんど無い等、明らかに身体への負担は減ってます。

ただ一つ弱点があるとすれば、ヒスタミンH1受容体遮断作用の強さです。
抗ヒスタミン薬が睡眠薬に用いられる様に、レメロンの傾眠作用はテトラミドと同様、
かなり強いようです。半減期が丸一日以上と長い薬なので、薬に敏感な人は一日中
眠気が続く可能性があります。ただうつ病は高い頻度で不眠も併発するので、
これがメリットになる人も多いと思います。しかも5-HT2A/C受容体の遮断は、
ノンレム睡眠(S3)を増加させ、眠りの質を改善する働きがあると言われており、
エプリバンセリンなど最新の睡眠薬開発で注目されている部分です。
半減期がもう少し短ければ、個人的にちょっと飲んでみたいんですけどね…。

折しも今年の1月末、ランセットという医学雑誌に、レメロンを含めて12種類の
新規抗うつ薬を有用性(効果)と忍用性(継続しやすさ)でランキングした論文が
掲載されました(過去記事参照)
これによればレメロンの効果は12種中1位で最も高く、継続しやすさは
7位と中間になってます。レメロンの主立った副作用は眠気と体重増加
(1年服用して+1kg行くかどうか?)くらいしか無いにも関わらず、意外と
忍用性が低いのは、そうとう強い眠気がある事を予感させますね。

万人向けの薬では無いでしょうが、ファーストチョイスの選択肢には十分入る
かと思います。2週間投与制限が解ける1年後には、爆発的にヒットするかも?
…少なくとも来年承認されるであろうSNRIのシンバルタよりは、明らかに話題性が
上の薬かと思われます。

遠くない春の訪れに備え、冬場はこれ飲んでひたすらコタツで眠るのもありかもね。
by haya by hayanoya | 2009-09-26 14:56 | ちびまる向ちゃんトピ
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