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向精神薬擬人化その37:ラミクタール
アリセプト10mgの箱を月末まで持ってるだけで7000円損する今日この頃、
皆様はいかがお過ごしでしょうか。息してるー?(主に俺が)

…というわけで、怒濤のインフルラッシュ(実はまだ収束してない)の後は
薬価改正という薬局屈指の嫌イベントを控え、鬱々な気分を揚げたいので
Age系の薬を今月は取り上げるよ!なんか要望の多かったみくタンだお!

薬理の特殊性と全規格チュアブル錠という萌え属性で最近人気急上昇中の
ラミクタールは、デパス・マイスリーに続き今後の薬擬人化界を担う
大物スターになるであろう事をここに予言するものであります!
…と思ってたら早速うさぬさんがアップを始めたようです。お先に失礼!

向精神薬擬人化その37:ラミクタール_f0133373_21345810.jpg
一般名はラモトリギン。
規格は2/5/25/100と多め。
愛称は「みく」。

みくと言えばもうアレなので、
ツインテとかニーソとかネギとか緑色とか
極力それを連想させるような
属性を排除した結果、
何故か幼女になりました(汗

ヨーグルトのほのかな香りが漂い、口の中でほろりと溶けるロリポップ。
俺たちは…ロリキャラ設定にすることを強いられてるんだっ!(集中線)
ウチの薬局ではほとんど25mgしか動かないので、配色メインは水色で。
服装はどうしようかと思って25mgPTPを眺めていると、「この色はジャンスカ以外
あり得ない」と私のゴーストが囁くので、さくっとジャンスカ幼女に決定。

頭は100mgを、靴下は5mgと2mgの配色を使っています。赤・青・緑の規格違い
トリコロールは最近の薬に増えており、キャラ付けしやすい反面ワンパターンに
なりがちで困ってます。トピナやガバペンもこれなんだよなぁ…。

スカートに潜り込んでる顔の見えない猫はシュレーディンガーさんのアレです。
ラミクタールの薬理の不透明性、不確実性を現してるので、スカートから
出て来ませんw 女の子のスカートの中は、いつだって異次元なのさ!

元々ウェルカム家の生まれなので、生粋の英国ロンドン娘。デンマークに
生まれてビーチャム家の養女となったぱきるは、血のつながらない義理の
姉に当たる。ウェルカム家とビーチャム家が統合されてファミリーとなった際に
一族の代表を任されて気が立っていたぱきるに散々泣かされたため、みくは
妄想と一人遊びが大好きな、ちょっと歪んだ性格に育ってしまった。

ぱきるが学園に入園し、着実に園内で権力を固めていく際に、その後を追う
形でみくも入園する。特殊なアンチエピレプティカルマジックを使えるという
一芸で入園試験をクリアするが、当初は非常に目立たない少女であった。

ところがEクラスを創設する動きが学園内で活発化し、抗てんかん魔法使いの
能力が再チェックされた事により、状況は一変する。彼女の持ち合わせている
ムードスタビライジング魔法は、非常に貴重な「ボトムアッパー」型であることが
判明したのである。じぷりー達非定型魔法使いの跳梁を快く思わない一派に
よって、みくは急速にEクラスの主力として祭り上げられることになる。

今までの冷遇っぷりから急にちやほやされるようになったので、すっかり図に
乗ってしまったみくは先輩であるてぐれっとやれね香に対しても横柄な
態度を取るのだが、基本頭が悪いためすぐにてぐれっとに泣かされてしまう。

葉酸拮抗の性格をもつので貧血気味で低血圧で目に力がない。テンションの高い
人を目の前にすると心が萎縮してしまって思うように力が出せないが、落ちた
人を苛つかせて逆上させる術には長けている。ベビーフェイスな外見と裏腹に
かなりの毒舌キャラであり、合わない人はとことん合わない。

しかしクラス内でみくと能力が被る者はほとんどいないので、てぐれっと
以外のEクラス生との関係は良好。というより毒舌吐いても生暖かい目で
見られている。つまりは舐められている。まともに怖がったり尊敬したり
してくれるのは性格の優しいれね香のみである。

義姉のぱきるに対して強烈なライバル心を燃やしており、いつか学園代表の座を
取って代わると息巻いている。しかし彼女の魔法原理は育ての親である
ヘンリー・ウェルカム卿にもよく分かっておらず、それが原因で今ひとつ
学園への売り込みに成功していない。世界で初めてSSRIを名乗って鮮烈に
デビューしたぱきるの名声に追いつくには、しばらく時間が必要かもしれない。



テグレトールやデパケンRといった抗てんかん薬が気分安定薬として用いられる
ようになると、当然ながら他の抗てんかん薬も気分安定薬としての作用がある
のではないかと期待されるようになります。そんな中で、日本で発売された
当初から、ラモトリギンは抗てんかん薬としてよりも気分安定薬として
期待されていました。

ラモトリギンは英ウェルカムファウンデーション社(旧バロウズウェルカム社)に
よって開発された、トリアジン骨格を持つ抗てんかん薬です。1960年代に
抗てんかん薬で治療されている患者に、葉酸欠乏症状が出る傾向があることが
見出され、逆に葉酸拮抗作用を持つ薬物は抗てんかん薬となりうるかも?いう
仮説が生まれました。これに基づいて合成されたのがラモトリギンです。

ラモトリギンは1990年にアイルランドで製造承認を受けた後、実際にてんかんの
治療において効果を上げ、成人だけでなく小児のてんかん治療にも幅広く
使われました。ラミクタールの剤型は、海外でも25mgまでかみ砕いても
水に溶かしても飲めるチュアブル・ディスパーシブル錠と呼ばれる設計で
作られていますが、これは子供に対して投与することを前提としているためです。
ちなみに海外では25mg以上の規格は普通の割線入り素錠となっておりますが、
日本は何故か100mg錠もチュアブル・ディスパーシブル錠で作られています。
さすが変態国家NIPPON!

ちなみにウェルカムファウンデーション社は95年にグラクソ社と合併し、
グラクソウェルカム社となっております。英国ではもう一つ大きな合併が89年に
起こっています。スミスクライン&フレンチ社とビーチャム社の合併で、
スミスクライン・ビーチャム社と命名されました。

この二大英国企業が更に合併したのが2000年で、グラクソ・スミスクライン社と
命名され、ウェルカムとビーチャムの名は消えてしまいました。しかし
ウェルカムはラミクタールやゾビラックス、ザイロリックなど薬物史に名を残す
薬を多数開発しており、世界屈指の強大な(むしろ凶悪な)開発力を誇る
グラクソ・スミスクライン社を支える原動力となっています。

日本では2003年の3月に一度製造承認申請が行われておりますが、データの
集計に誤りがあったとかで申請が取り下げられています。その後2008年に
ようやく抗てんかん薬として承認されましたが、海外では20世紀末より双極性
障害への転用が研究されており、その頃には既に70カ国以上で気分安定薬と
しての承認を受けていました。抗てんかん薬よりも気分安定薬の方が市場規模
は遥かに大きいので、日本の精神科にラモトリギンという選択肢が浸透したのは、
双極性障害への適応を取得した2011年以降になります。つまりこの1年で
ラミクタールは急速にシェアを伸ばしたのです。

何故ラモトリギンがそこまで双極性障害治療において期待されているのか。
それはラモトリギンが従来のリチウム・バルプロ酸・カルバマゼピンとは異なる
気分安定作用を持つと言われているからです。それは「うつを上げる力」です。

従来、気分安定薬と呼ばれる薬は「躁を下げる」事は得意でも、「うつを上げる」
事は上手くありませんでした。そこで抗うつ薬と呼ばれる三環系やSSRIが
使われていたのですが、これらは双極性障害に用いると高い頻度で躁転を
引き起こすので、非常にコントロールが難しかったのです。その点、
ラモトリギンは長期的に服用しても躁転をほとんど引き起こさず、フラットな
状態に安定化することが出来ます。一般に双極性障害とは、双極とは言うものの
躁の期間は短く、ほとんどの時間をうつ状態で過ごすことが多いため、
抗うつ薬よりも安全にうつを上げられるラモトリギンは非常に有用な薬なのです。

ところが、ラモトリギンが何故このような特殊な気分安定作用を持っているのか
という点に関しては、実は全く分かっていなかったりします(笑)

ラモトリギンのベースであるフェニルトリアジン骨格はナトリウムチャネルの
阻害作用が強いとされており、事実ラモトリギンはその強いナトリウムチャネル
阻害によって過剰なニューロン発火を抑える事で抗てんかん作用を発揮します。
しかし、同様の薬理作用を持つカルバマゼピンに較べるとラモトリギンは
躁を押さえ込む力が弱く、逆にカルバマゼピンはうつを上げる力が弱いことから、
この作用はラモトリギンの気分安定作用と関係ないのでは?と言われています。

ラモトリギンはその他に、前シナプスのグルタミン酸やアスパラギン酸の放出を
抑制し、後シナプスのNMDA受容体の機能を低下させ、相対的にGABA機能を
引き上げる事が知られています。これはカルバマゼピンには無い作用です。
ラモトリギンはある濃度以上に達するとN/P/O型の電位依存型カルシウム
チャネルを拮抗阻害すると言われています。前シナプスに存在するこのチャネル
は小胞体とリンクしており、チャネルを伝ってカルシウムがの細胞内に流入
すると、構造変化を起こして小胞体を細胞膜に叩きつけます。この際に小胞体の
中にあるグルタミン酸がシナプス間隙に放出されるのです。ラモトリギンは
カルシウムチャネルを塞ぐためにカルシウムが細胞内に流入されず、従って
小胞体が動かず、グルタミン酸の放出も起こらない…という事が推察されます。

しかしNMDA受容体と双極性障害の関連は今のところほとんど明らかになって
おらず、上記の事柄が本当にラモトリギンの薬理に関与しているのかどうかは
不明で、結局ラモトリギンがうつ特化的に働く理由にはなっていません…。
NMDA受容体系は次世代統合失調症治療薬のターゲットの一つとして現在研究中で
あるため、あと10年くらいしたらもっと色々な事が解明されるかと思います。
NMDA受容体の遮断薬としては抗アルツハイマー薬のメマンチン(メマリー)が
上市されていますが、ひょっとしたらこれも双極の薬として使えるかも
知れません。あるいは逆にラモトリギンがアルツハイマーの薬として応用される
日が来るかも知れませんね。

薬物動態は非常に優秀で、リチウムと同じく経口投与したらほぼ100%吸収
されます。服用後1~2時間で最高血中濃度に達し、丸一日くらいで半減します。
分解はおなじみのチトクロム450…ではなく、グルクロン酸抱合によって
行われます。従って肝機能の衰えた人でも比較的安全に服用できますし、
リチウムのように老化に従って著明に排泄力が低下することもありません。

単体で用いるなら良いこと尽くめなのですが、グルクロン酸抱合は他の
抗てんかん薬と併用する際に少し問題になります。同じく気分安定薬として
汎用されるバルプロ酸もグルクロン酸抱合によって排泄されますし、
カルバマゼピンは逆にグルクロン酸を作る働きをもっています。従って
バルプロ酸と併用するとグルクロン酸を競合的に奪われてラモトリギンの
血中濃度が2倍に上がるし、カルバマゼピンと併用すると多量のグルクロン酸を
与えられて血中濃度が半分に下がります。

このため、デパケンと併用する際は初期量を半分に…といってもラミクタールは
チュアブルの為半分に割れないので25mg錠を1日おきに服用し始める必要があり、
カルバマゼピンと併用する際は逆に50mgから服用を開始する必要があります。
グルクロン酸合成を誘導する薬物には他にフェニトイン・フェノバルビタール・
プリミドンなどがありますが、これらは通常双極性障害の治療には用いないので
あまり気にする必要は無いと思います。リチウムやオランザピンなど他の気分
安定薬であれば、これらを気にせず普通に服用できます。

「安全性の高い薬なら、別にこんな面倒くさい事考えずに最初から50mg飲めば
いいのでは?」…という意見もあるかと思います。ラモトリギンは従来の
抗てんかん薬に較べれば非常に安全な薬です。そう、ただ一点の懸念を除けば。

それは抗てんかん薬であれば真っ先に懸念されるべき副作用、中毒疹。
ラモトリギンもまた抗てんかん薬であるからには、この副作用を無視する
わけにはいきません。重篤な中毒疹であるスティーブンス・ジョンソン症候群や
中毒性表皮壊死症。医療関係者なら一度は聞いたことがあると思います。
発生頻度は非常に低いものの、発生すると急速に病状が進行して全身の表皮の
壊死を引き起こす、予後も良くない凶悪な皮膚症状です。
抗てんかん薬で無くとも起こる可能性はありますが、それらは現場ではほぼ
無視される程の低確率であるのに対し、抗てんかん薬を用いる際はまず第一に
注意すべき点である所が異なります。

一説によれば、中毒疹の原因の一つとしてナトリウムチャネルの阻害が関与して
いるかもしれないとの事です。ナトリウムチャネルは脳シナプスだけでなく
全身に存在し、神経パルスの伝達を司っています。これを阻害することで細胞の
働きが乱れ、(途中色々あって)結果として全身に発疹が出る…という仮説で、
抗てんかん薬の一部にこのリスクが高いのは、ナトリウムチャネル阻害作用を
もつ薬が多いせいかもしれません。

ラモトリギンの国内治験では、スティーブンス・ジョンソン症候群の発生率が
成人・小児合わせて0.5%ほどもあり、審査員がどん引きする様子が議事録に
書かれています(笑)。この発生頻度はラモトリギンの服用量を急速に上げたために
起こっているとされており、ラモトリギンの高いバイオアベイラビリティが
却って徒となっている形です。現在の添付文書に従って漸増服用する限りに
おいては今のところ一例も発生していないようです…が、世の中にはMRの説明を
聞かず、添付文書も全く見ずに新薬を使いたがる医師がたまにおりますので、
患者側も自己防衛が必要になるかと思います。

単剤療法であれば、1~2週目は25mg/日、3~4週目は50mg/日、5週目は100mg/日、
6週目以降は200mg/日。以後増量する際は1週間以上空けながら。デパケン併用
時はその半分、テグレトール併用時はその倍…というのが教科書的用法です。
ただ、双極の場合はあまり増量しなくとも効果的である場合も多く、50~75mg
程度で維持しているケースもあります。急速に増やすのは問題ですが、添付文書
通り増えていないからと言って自己調節しないようにしましょう。2週間以上
中断した場合は、また最初の用法からやり直す形になります。

もっとも、この発生率は古典的抗てんかん薬に較べればマシな方です。
テグレトールも同レベルの発生率ですし、フェノバルビタールやフェニトインに
至ってはその4倍くらいのリスクがあります(デパケンは低い)。中毒疹を気に
してラミクタールをテグレトールに変更するのはナンセンスという事になります。

スティーブンス・ジョンソン症候群に至らないまでも、服用し始めてから8週間
以内は発疹が起こりやすく、10人に1人の確率で発生すると言われています。
そのほとんどは軽度の皮疹で終わると思うのですが、重篤な中毒疹と初期症状が
区別しにくいので、発疹が出たら早めに医師に相談する方がよいと思います。

2011年に発表された国内の双極性障害治療ガイドラインによれば、ラモトリギン
の位置づけは「急性うつの場合リチウム・クエチアピンに次いで第二選択」
「うつ予防の場合リチウムに次いで第二選択」です。急性躁や躁の予防に対しては
全く推奨されていません。気分安定薬で躁への治療効果を持たないのは
この薬くらいではないでしょうか。しかし他に類を見ない独自の抗うつ作用の
ために、ラモトリギンは十分な存在価値を持っていると言えます。

薬価は新薬に相応しい高さで、25mgでも1錠100円近くします。100mgは267.4円
なので、75mgよりも100mgの方が安く付く…という逆転現象が生じています。
双極性障害の適応をとっているのは25mgと100mg錠なので、小児のてんかん用に
作られた2mg錠と5mg錠は通常使われません。しかしマニュアル通りの運用を
しても10%で皮疹が出るのであれば、初期服用量はさらに減らしてこれらを
用いるのもありじゃないかと思います。なにしろ4規格全てが最小包装140錠と
いう、まったく薬局の在庫事情を考慮していない暴力的なパッケージなので
(25mgのみ使いづらいスターターパックとやらがあるけど)、もっと下の規格を
活用できる用量設定を取って欲しかったです。デッドになった5mg錠引き取れ!

気分安定薬というあやふやな概念が成立した21世紀以降、精神科領域の薬は
統合失調症・大うつ・双極性障害・不安障害・痴呆症・てんかんなど、それぞれ
の垣根を跳び越えた分野で使われる「非定型」の薬が多用される状況下になって
います。ラミクタールもまた非定型な性質を持っており、その意味で先輩の
パキシルよりも豊かな市場を構築する可能性があります。頑張れみくタン!
敵は話を聞かない医師とレセプトの支払基金だけだ!(超ヤッカイです)
by haya by hayanoya | 2012-03-17 21:47 | ちびまる向ちゃんトピ
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