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ちびまる向ちゃん(100)
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一般名タンドスピロン。 規格は5mgと10mgで、最近20mgが発売。 愛称は「せでぃ」。 クラスは抗不安薬クラス(Aクラス)。 大日本住友になってからパッケージの色が 全部白と緑に統一されてしまい、 非常に個性のない外観になりました。 しょうがないのでベーシックに セーラー服+三つ編みにしてみました。 太眉で垢抜け無さを強調。 セディール自体がたいそう地味な薬なので こんなもんで充分でしょう(ヲィ 20mgのシートは金の地に緑のラインが入っているので、 三つ編みにしてラインを表現しています。 この状態で三つ編みほどいたら、ものっすごく変な色合いになりそう。 自身が斬新な薬理作用を持っているせいか、新しいもの好きな 理系少女。でも理論や概念で満足してしまい、しょっちゅう メーカーの宣伝文句に乗せられています。そのため、身につけて いるのも微妙な物が多いです。 腕に付けているのはDr.中松の提唱した第四世代携帯。 手に持っているのはマイクロソフトの提唱したUMPC、Origami。 足にはいているのはiPodチップ内蔵のナイキシューズ。(別にランニングはしない) 最近はなにやらセカンドライフにはまっているようです。 性格もそんな感じで、独自の理論を展開し、周囲を 置いてけぼりにしてしまうことが多々あります。 ヒートアップするたびに、ドグマチールのまちにつっこまれる状態。 そんなわけで、非ベンゾジ系のまちとはよくつるんでいます。 自分自身は抗うつ薬クラス(Dクラス)に編入されたいと 思っており、落ちこぼれたとはいえそこに一度は所属していた まちを、うらやましく感じているようです。 1984年、ブリストル=マイヤーズ社より、新しい抗精神病薬として ブスピロンという、ドパミン受容体拮抗薬が開発されました。 しかしこの物質は抗精神病効果よりもむしろ抗不安効果に 優れていることが明らかとなり、類似物質のイプサピロン等と共に、 アザピロン系抗不安薬と分類されました。 当初、ブスピロンの抗不安効果はドパミン受容体の遮断によるもの と考えられていましたが、他のアザピロン系の物質にその作用は なく、むしろセロトニン受容体の1つ、5-HT1A受容体を刺激する ことが判明しました。 1980年代は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の様々な問題が取り上げ られた時期です。乱用、依存、耐性、退薬症状などなど。 問題のある薬とは分かっていながら、他にいい薬があるわけでも なく、仕方なく使っている状況下でした。 しかし、アザピロン系抗不安薬はそう言った問題を一切引き 起こさない、画期的な抗不安薬でした。 セロトニン神経がセロトニンを放出すると、5-HT2受容体を介して 不安を引き起こします。しかし、セロトニン神経自身にも 5-HT1受容体があり、セロトニン放出を抑制する方向に働きます。 つまりセロトニン神経は自分自身で、セロトニンの出力を制御 出来るわけです。サーモスタットのような感じですね。 しかし、不安障害の患者ではこの機構がうまく働いていません。 セロトニン神経の5-HT1受容体が減少しており、セロトニンの 出力を制御できなくなっています。結果として不安が収まらない 状態が続くようになります。 アザピロン系の抗不安薬は、この減少した5-HT1受容体の量を 元に戻すことにより、セロトニンの放出量を減らして抗不安効果を 発揮します。 ベンゾジアゼピン系の抗不安薬はGABA系と呼ばれる抑制系神経に 作用し、セロトニン・ドパミン・ノルアドレナリンの全ての 活動をブレーキします。不安も減るけど眠気や健忘などやっかいな 副作用も多発します。 作用範囲をセロトニン5-HT1受容体に限定すれば、そう言った 副作用も出てきません。まさに理想の抗不安薬になるはずでした。 ところが、日本で行われた臨床試験では、ブスピロンは抗不安効果 においてプラセボを上回ることができず、導入は断念されました。 5-HT1受容体の量を調節するというブスピロンの性質上、その 効果はベンゾジアゼピン系に比べ、遥かに遅れて現れます。 これはブスピロンの大きな欠点で、1日3回服用にもかかわらず、 効果が出るのは2~4週間後という、極めて患者のコンプライアンス を得られにくい薬といえます。症状改善が見られず中止、という 結果に終わる事も多々あったでしょう。 日本では、住友製薬がアザピロン系の抗不安薬開発に着手して おり、その結果完成したのがタンドスピロン(セディール)です。 ブスピロンが有効性見られず脱落、イプサピロンがセロトニン系 副作用の多発により脱落と、アザピロン系抗不安薬に逆風が 吹く中、唯一ジアゼパムとの比較試験で抗不安効果に遜色なし との結果を得て、無事1996年に発売されました。 セディールはブスピロンに比べ、セロトニン神経自体の 5-HT1受容体だけでなく、投射先の5-HT2受容体の働きをも 5-HT1受容体を介して抑制する働きが強いと言われています。 そのあたりがブスピロンに勝る効果を得られた原因でしょう。 さすがにパニック障害や社会恐怖など、刹那的な不安の治療 においてはベンゾジアゼピン系に劣りますが、漫然と続く不安 (全般性不安障害)の治療に対しては、依存も耐性も退薬症状も 起こさないセディールの方が安全性に優れています。 セディールはそこそこ売れており、国産薬の中ではデパス(100億)、 メイラックス(40億)に次いで売り上げ3位(30億)を確保しています。 (ドグマチールは70億なので、それを含めれば4位。) とはいえこれは薬価の高さに起因していると思われます。 少なくともソラナックスやレキソタンなどの外資系抗不安薬より 売れてるとはとても思えません。抗不安薬全体から見れば かなり下の方に位置します(メレックスやコレミナールは論外)。 アザピロン系抗不安薬の面白いところは、不安だけでなくうつ病に 対しても一定の効果を期待できることです。 うつ病では不安障害とは逆に、セロトニンが欠乏した状態 になっています。セロトニン神経の5-HT1受容体が通常より増加 しており、セロトニンの放出に過度のブレーキがかかって しまっています。アザピロン系は、今度は増えすぎた受容体を 減らす方向に働くのです。 うつ病治療の第一選択はSSRIですが、アザピロン系はSSRIとは 別方向からセロトニン系を正常化させる働きを持つため、 両者を併用する事で、より高い効果が期待出来ると言われています。 実際に海外ではSSRIとブスピロンの併用が、SSRI単独で 効果の無かったうつ病患者に効いたとの報告が出てきています。 ただ、日本でSSRIとタンドスピロンを併用する動きはあまり ありません。理由は両者の薬価の高さです。 2007年現在、SSRIの代表であるパキシルは20mg錠で241円です。 最大量の40mgだと482円/day。セディールは20mg錠で72円ですが、 セディールが真価を発揮するのは60mgのため、20mg3錠で216円。 両者を併せれば一日薬価698円です。4週間処方で19544円。 3割負担でも月に6000円近く吹っ飛びます。 そんなに負担が増えるくらいならベンゾジアゼピン系や三環系 を組み合わせた方が安上がりです。 また、セディールも1日3回服用という煩わしい用法になっています。 デパスのように即効性があるならともかく、効いているか どうかも分からない薬を日に3回飲むのは、存外苦痛な行為です。 というわけで、積極的にこの併用療法を行う所は少ないです。 薬効自体は非常に面白い物を持っていながら、効果発現の遅さと 服用回数の多さによって人気のない抗不安薬。 よく効く薬は好きですが、お題目だけやたら立派で実用性は?な セディールという薬も、私は結構好きです。 2001年、住友製薬はルーランというアザピロン系抗精神病薬を 発表しました。この構造式はセディールとよく似ており、 その開発にセディールがヒントになったことが明らかです。 アザピロン系抗不安薬は元々、抗精神病薬として開発されました。 それが20年近く経って、ルーランとして結実したわけです。 なんて話を聞くと、あぁこの業界もプロジェクトXに満ちて いるなぁ、と癒されますね。…変ですか? |