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向精神薬擬人化その13:セディール
向精神薬擬人化その13:セディール_f0133373_2249551.jpg
一般名タンドスピロン。
規格は5mgと10mgで、最近20mgが発売。
愛称は「せでぃ」。
クラスは抗不安薬クラス(Aクラス)。

大日本住友になってからパッケージの色が
全部白と緑に統一されてしまい、
非常に個性のない外観になりました。
しょうがないのでベーシックに
セーラー服+三つ編みにしてみました。
太眉で垢抜け無さを強調。

セディール自体がたいそう地味な薬なので
こんなもんで充分でしょう(ヲィ

20mgのシートは金の地に緑のラインが入っているので、
三つ編みにしてラインを表現しています。
この状態で三つ編みほどいたら、ものっすごく変な色合いになりそう。

自身が斬新な薬理作用を持っているせいか、新しいもの好きな
理系少女。でも理論や概念で満足してしまい、しょっちゅう
メーカーの宣伝文句に乗せられています。そのため、身につけて
いるのも微妙な物が多いです。

腕に付けているのはDr.中松の提唱した第四世代携帯
手に持っているのはマイクロソフトの提唱したUMPC、Origami
足にはいているのはiPodチップ内蔵のナイキシューズ。(別にランニングはしない)
最近はなにやらセカンドライフにはまっているようです。

性格もそんな感じで、独自の理論を展開し、周囲を
置いてけぼりにしてしまうことが多々あります。
ヒートアップするたびに、ドグマチールのまちにつっこまれる状態。

そんなわけで、非ベンゾジ系のまちとはよくつるんでいます。
自分自身は抗うつ薬クラス(Dクラス)に編入されたいと
思っており、落ちこぼれたとはいえそこに一度は所属していた
まちを、うらやましく感じているようです。




1984年、ブリストル=マイヤーズ社より、新しい抗精神病薬として
ブスピロンという、ドパミン受容体拮抗薬が開発されました。
しかしこの物質は抗精神病効果よりもむしろ抗不安効果に
優れていることが明らかとなり、類似物質のイプサピロン等と共に、
アザピロン系抗不安薬と分類されました。

当初、ブスピロンの抗不安効果はドパミン受容体の遮断によるもの
と考えられていましたが、他のアザピロン系の物質にその作用は
なく、むしろセロトニン受容体の1つ、5-HT1A受容体を刺激する
ことが判明しました。

1980年代は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の様々な問題が取り上げ
られた時期です。乱用、依存、耐性、退薬症状などなど。
問題のある薬とは分かっていながら、他にいい薬があるわけでも
なく、仕方なく使っている状況下でした。

しかし、アザピロン系抗不安薬はそう言った問題を一切引き
起こさない、画期的な抗不安薬でした。

セロトニン神経がセロトニンを放出すると、5-HT2受容体を介して
不安を引き起こします。しかし、セロトニン神経自身にも
5-HT1受容体があり、セロトニン放出を抑制する方向に働きます。
つまりセロトニン神経は自分自身で、セロトニンの出力を制御
出来るわけです。サーモスタットのような感じですね。

しかし、不安障害の患者ではこの機構がうまく働いていません。
セロトニン神経の5-HT1受容体が減少しており、セロトニンの
出力を制御できなくなっています。結果として不安が収まらない
状態が続くようになります。

アザピロン系の抗不安薬は、この減少した5-HT1受容体の量を
元に戻すことにより、セロトニンの放出量を減らして抗不安効果を
発揮します。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬はGABA系と呼ばれる抑制系神経に
作用し、セロトニン・ドパミン・ノルアドレナリンの全ての
活動をブレーキします。不安も減るけど眠気や健忘などやっかいな
副作用も多発します。

作用範囲をセロトニン5-HT1受容体に限定すれば、そう言った
副作用も出てきません。まさに理想の抗不安薬になるはずでした。

ところが、日本で行われた臨床試験では、ブスピロンは抗不安効果
においてプラセボを上回ることができず、導入は断念されました。

5-HT1受容体の量を調節するというブスピロンの性質上、その
効果はベンゾジアゼピン系に比べ、遥かに遅れて現れます。
これはブスピロンの大きな欠点で、1日3回服用にもかかわらず、
効果が出るのは2~4週間後という、極めて患者のコンプライアンス
を得られにくい薬といえます。症状改善が見られず中止、という
結果に終わる事も多々あったでしょう。

日本では、住友製薬がアザピロン系の抗不安薬開発に着手して
おり、その結果完成したのがタンドスピロン(セディール)です。
ブスピロンが有効性見られず脱落、イプサピロンがセロトニン系
副作用の多発により脱落と、アザピロン系抗不安薬に逆風が
吹く中、唯一ジアゼパムとの比較試験で抗不安効果に遜色なし
との結果を得て、無事1996年に発売されました。

セディールはブスピロンに比べ、セロトニン神経自体の
5-HT1受容体だけでなく、投射先の5-HT2受容体の働きをも
5-HT1受容体を介して抑制する働きが強いと言われています。
そのあたりがブスピロンに勝る効果を得られた原因でしょう。

さすがにパニック障害や社会恐怖など、刹那的な不安の治療
においてはベンゾジアゼピン系に劣りますが、漫然と続く不安
(全般性不安障害)の治療に対しては、依存も耐性も退薬症状も
起こさないセディールの方が安全性に優れています。

セディールはそこそこ売れており、国産薬の中ではデパス(100億)、
メイラックス(40億)に次いで売り上げ3位(30億)を確保しています。
(ドグマチールは70億なので、それを含めれば4位。)

とはいえこれは薬価の高さに起因していると思われます。
少なくともソラナックスやレキソタンなどの外資系抗不安薬より
売れてるとはとても思えません。抗不安薬全体から見れば
かなり下の方に位置します(メレックスやコレミナールは論外)。

アザピロン系抗不安薬の面白いところは、不安だけでなくうつ病に
対しても一定の効果を期待できることです。

うつ病では不安障害とは逆に、セロトニンが欠乏した状態
になっています。セロトニン神経の5-HT1受容体が通常より増加
しており、セロトニンの放出に過度のブレーキがかかって
しまっています。アザピロン系は、今度は増えすぎた受容体を
減らす方向に働くのです。

うつ病治療の第一選択はSSRIですが、アザピロン系はSSRIとは
別方向からセロトニン系を正常化させる働きを持つため、
両者を併用する事で、より高い効果が期待出来ると言われています。

実際に海外ではSSRIとブスピロンの併用が、SSRI単独で
効果の無かったうつ病患者に効いたとの報告が出てきています。

ただ、日本でSSRIとタンドスピロンを併用する動きはあまり
ありません。理由は両者の薬価の高さです。

2007年現在、SSRIの代表であるパキシルは20mg錠で241円です。
最大量の40mgだと482円/day。セディールは20mg錠で72円ですが、
セディールが真価を発揮するのは60mgのため、20mg3錠で216円。

両者を併せれば一日薬価698円です。4週間処方で19544円。
3割負担でも月に6000円近く吹っ飛びます。
そんなに負担が増えるくらいならベンゾジアゼピン系や三環系
を組み合わせた方が安上がりです。

また、セディールも1日3回服用という煩わしい用法になっています。
デパスのように即効性があるならともかく、効いているか
どうかも分からない薬を日に3回飲むのは、存外苦痛な行為です。
というわけで、積極的にこの併用療法を行う所は少ないです。

薬効自体は非常に面白い物を持っていながら、効果発現の遅さと
服用回数の多さによって人気のない抗不安薬。

よく効く薬は好きですが、お題目だけやたら立派で実用性は?な
セディールという薬も、私は結構好きです。

2001年、住友製薬はルーランというアザピロン系抗精神病薬を
発表しました。この構造式はセディールとよく似ており、
その開発にセディールがヒントになったことが明らかです。

アザピロン系抗不安薬は元々、抗精神病薬として開発されました。
それが20年近く経って、ルーランとして結実したわけです。

なんて話を聞くと、あぁこの業界もプロジェクトXに満ちて
いるなぁ、と癒されますね。…変ですか?
by haya by hayanoya | 2007-04-26 23:00 | ちびまる向ちゃんトピ
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