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向精神薬擬人化その27:サインバルタ
忙しすぎる4月が終わり、ようやく暇になったので来年の夏コミに備えてUp。
あれ?今年のは?

当初はあんまり興味の無かったサインバルタですが、色々話を聞くうちに、
意外といい薬なんじゃないか、と思えてきました。

f0133373_2224926.jpg一般名デュロキセチン。
規格は20mgと30mg。
愛称は「さいん」。

Dクラス在籍。エリートの集うDクラスにしては
馬鹿っぽい格好だが、頭はそれなりに良い。
ただ生来のドジッ子属性ゆえに入園試験に
失敗し、チンドン屋として海外巡業していた
ところを急遽呼び戻されたため、他の連中の
ような研究職にはまだ付いていない。



サインバルタ→シンバルタ→シンバル→鼓笛隊という安直なイメージ。
イーライリリーの薬なので、ちょっと軍服テイストを入れたかったのです。
基本カラーはイーライリリーのシンボルである紅白と、
セロトニン神経の青、ノルアドレナリン神経のキミドリ。
米国と日本のハーフなので、肌の色は少し黄色系。

学園吹奏楽部に所属しており、両手にシンバルを抱えている。
本人は父親である軍人のリリー大佐のためのパレードを
行うのが夢であり、軍楽隊の一員になるべく頑張っている。
将来的には吹奏楽器の全てを極めたいと思っているが、今のところ
シンバルをなんとか鳴らすのが精一杯。学園入園に失敗して米国巡業を
続けているうちに、そのシンバルが地味に評価を高めていった。

米国で衝撃的なデビューを飾り、華々しく活躍している姉「ローザ」に
対し、学園は早くから入園を打診していた。しかしリリー大佐は典型的な
アメリカ娘であるローザが日本的な風土に馴染まないと判断しており、
おとなしいが能力ポテンシャルは姉より高いと感じていた妹のさいんを
日本に送り込んだ。この時のホームステイ先を務めたのが塩野義家である。

しかしあまりにものほほんとした性格とと致命的なまでに要領が悪い挙動に
より、肝心の入園試験中に居眠りしてシンバルを落とし、派手に音を
まき散らすという失態をかます。この件は「この子のポテンシャルは
偽物(シュード)なのでは?」という疑念を学園人事部に抱かせるに十分であり、
結局一度入園に失敗してしまう。

現学園の理事長である紫木は、塩野義家に遊びに行ったときに彼女の
シンバルの演奏を耳にしており、その澄んだ多彩な音色を聞いて一編に
魅了されてしまった。入園試験後、彼女が米国に帰ってシンバリストとして
活躍している事を聞き、理事長権限で学園人事部に働きかけて
もう一度入園試験を行い、さいんに負けず劣らずドジっ子であるぱきると
勝負させ、晴れて試験合格とした。この件で当て馬にされたぱきるは
今でもさいんを嫌っている。

性格は温厚で善良。争いごとを好まず、落ち込んでいる人に対して
声をかけずにいられない。しかし元気づけようとして耳元でシンバルを
鳴らすのはかなり迷惑がられている。ヒーリング魔法の数少ない使い手
であり、シンバルを持たない方がよほど有り難いのだが、本人はそれを
アイデンティティと感じており、手放さそうとしない。

同じSNRIということもあり、とど美と仲良くしたいと考えているが、
魔力が高く理事長の推薦まで受けているさいんをとど美は非常に恐れており、
さいんから逃げ回っているので会話はほとんど成立していない。

家族としては長女のローザの他に、次女のすてらが存在する。すてらは
几帳面で慎重な性格なので、さいんよりも先に学園在籍を許されている。
クラスが違うこともあり、さいんとすてらの間に会話はあまり無いが、
歳がほとんど変わらないこともあって、姉妹仲は良好である。



日本でデュロキセチンはサインバルタ、という名前で登録されましたが、英語で
書くとCymbaltaです。語源は明らかにされていませんが、おそらくは
Cymbal+Tabletでしょう。セロトニンとノルアドレナリンのデュアルアクションを、
二つの円盤を重ねて音を出すシンバルに喩えたものだと思われます。

1988年に米国で発売されるや、ライフスタイル改善ドラッグとして爆発的な
人気を呼び、SSRIの名を一躍有名にした「プロザック(フルオキセチン)」は、
その抜群の知名度にも関わらず、結局日本デビューすることはありませんでした。

世界トップクラスの厳しさである日本の臨床試験を通過するために、用意しなければ
ならないコストがあまりに高かったためです。しかし米国イーライ・リリー社は
日本市場を捨てたわけではありません。プロザックのすぐ後に、強力な抗うつ薬の
候補物質が控えていたため、あえてプロザックの開発を進めなかったのです。

プロザックを凌ぎうる存在として開発者の期待を一身に浴びた化合物。それが
開発番号LY227942、デュロキセチンでした。プロザックが米国デビューした頃には
既に誕生していたこの物質が、日本でデビューを果たすのに20年もかかるとは、
当時誰も想像していなかったのではないでしょうか。

デュロキセチンはプロザック米国発売3年後の1991年に、早くも塩野義製薬によって
日本での開発が打診されていました。リリー社はこれに乗り、1992年の5月より
日本医薬品史上初の日米同時開発が開始されたのです。日本では塩野義製薬と
日本イーライ・リリー社が共同で開発に取り組みました。

ヒト血小板におけるセロトニンの取り込み阻害作用を検査したところ、
デュロキセチン20mgで阻害率が90%に達したため、ヒトにおける臨床用量は
20mgであろう、と設定されました。しかしそれは最大の失敗でした。
後年の研究の結果、デュロキセチンの効果域は40mg以上と判明しています。
開発当初から不十分な臨床用量が設定されてしまったために、デュロキセチンは
何度も他薬との比較試験で安定した成績を残すことが出来ませんでした。

米国では95年、プラセボに対する優位性が確保できず、ついに開発を中止して
しまいました。それを受け、日本イーライ・リリー社も開発から撤退、
デュロキセチンの開発を続けているのは世界でただ一つ、塩野義だけになりました。

ここで塩野義が開発を中止すれば、この薬が世に出ることは無かったわけです。
米国では十分な成績が出ませんでしたが、日本ではイミプラミンに劣らないという
データが出ており、これを根拠に塩野義は開発を続行しました。当時の日本で
うつ病という病気に対する世間的な認識はほとんど無く、抗うつ薬の市場は
今とは比べものにならないほど小さいものでした。そんな状況下、米国が
さじを投げた薬に対して開発コストを振り分けた塩野義の決断は賞賛に値します。

しかしながら、その決断はなかなか報われません。98年、木の実ナナを用いて
新聞広告を展開し、デュロキセチンの治験者を募りました。それによって
ミアンセリンとの比較試験を行いましたが、満足する結果は得られませんでした。
結局この比較試験がとどめとなり、2001年に塩野義は厚生省に製造申請を行うも、
効果不十分として2002年に却下されました。デュロキセチンの開発はこれで
振り出しに戻ってしまいました。

一方米国では、日本でこれだけしぶとく開発を続けているのだから、その効果を
見直すべき、という論調が増え、99年に臨床用量を増やして再開発が始まりました。
そして2001年にFDAに申請し、2004年には抗うつ薬としてFDAの製造承認を獲得
しました。この結果は日本のデュロキセチン開発陣に勇気を与え、臨床用量を
40~60mgに増量して日本発売への再挑戦が始まりました。

その後行われたプラセボとの比較試験にて、主に副作用頻度の多さから失敗し、
初期量を20mg、維持量を40~60mgとする方法論を得ます。そして2007年に
行われたパロキセチンとの比較試験でようやく非劣性が証明され、晴れて2008年に
再申請、2010年に承認されました。

日米同時開発というのも初の出来事ながら、日本と米国が結果をフィードバック
しながらようやく承認にこぎ着けた薬というのもこれくらいではないでしょうか。
とにかく難産だった薬ですが、いざ発売してみればデュロキセチンは順調に
売り上げを伸ばし、往年のプロザックに迫る年間2000億円以上の売り上げを
リリー社にもたらしています。一時期は新製品が全く出ず、「フロモックスしか
売る薬が無い」とまで揶揄された塩野義製薬にとって、高脂血症薬クレストールと
共に、福音を運ぶ薬になる事を祈ります。

フルオキセチンの後継種と言うだけあって、フルオキセチンとデュロキセチンの
構造式は比較的似ています。最近の抗うつ薬は従来のように構造式上の類似点が
見られず、「~系」と呼ばれる分類はされなくなりましたが、強いて言うならば
フェノキシプロピルアミン系とでも言えそうです。同じリリーの薬である
ストラテラ(アトモキセチン)もこの分類に入ります。

なお、パロキセチンやレボキセチンにも「-oxetine」の名が付いていますが、
これはプロザックが馬鹿売れしたせいで、-oxetineが抗うつ薬を表すステムとして
認められたためです。従ってこれらはデュロキセチンと全く別の構造式を
持ちます。話がややこしくなるので紛らわしい名前はやめて欲しいですね。

薬理学的な部分で分類すると、この薬はセロトニンおよびノルアドレナリン両方の
シナプス間隙における濃度を高める「SNRI(Serotonin Noradrenalin Reuptake
Inhibitor)」と呼ばれるカテゴリーに属します。世界的に見て有名なSNRIは他に
エフェクサー・トレドミンしか存在せず、今回トレドミンに続いて日本で承認された
二番目のSNRIということになります。

当然、機序が全く同じ薬であるトレドミンと何が違うのか、と言う話になりますね。
私も同じ疑問を、日本イーライ・リリーのMRにぶつけました。彼は言いました。

「やれやれ、トレドミンのようなプラセボをSNRIと言っているようじゃ、
 あんたの抗うつ薬リテラシーも怪しいもんだ。
 来週この薬を買ってみてください。本物のSNRIをお見せしますよ」

(CV:井上和彦/一部の表現に誇張アリ)

とまぁ、山岡○郎並みに自信満々の頼もしい返答を頂いたのです(笑)
なんでも、セロトニンおよびノルアドレナリントランスポーターへの阻害力の
強さはトレドミンの比ではないそうです。サインバルタの臨床効果をトレドミンで
得るには、500mgくらい服用しなければならなくなるとか。本当か?
以前記事にしたランセットレポートによれば、デュロキセチンはトレドミンに
勝るどころか、負けてたような気もするが…まぁ、人それぞれだしね!

とにかく、リリーにとってはトレドミンなど全く眼中になく、あくまでライバルは
パキシル・ジェイゾロフトと言ったSSRIであるようです。
…まぁトレドミン発売当初も「SNRIは三環系に匹敵する効果!(キリッ)」とか
ヤンセンあたりが言ってたような気がします。SNRIは絶えずSSRIと比較されるのが
宿命みたいなもんなのかもしれません。

セロトニンだけよりも、ノルアドレナリンを一緒に増やす方がお得ではありますが、
それが治療効果に直結しないのが抗うつ薬の難しいところです。これらの神経伝達
物質は少なすぎても効果がないし、多すぎれば副作用に一直線です。一口にうつと
言っても、セロトニンとノルアドレナリン、あるいはドパミンのどれが機能してない
のか、また機能低下のレベルはどれだけかというのは、患者ごとに異なります。
それを一発で判断するのは熟練の精神科医でも困難です。結局手当たり次第に
薬を飲ませ、効果がなければ次に行くという総当たりになってしまうわけですね。
経験と観察力と話術と薬理の正確な知識を総動員して、最適の薬に到達するまでの
試行錯誤を極力減らせる医師が、名医と呼ばれるのです。

現状の精神薬物治療がこうである以上、薬の選択肢が多い方が医師にとって
ありがたいわけで、デュロキセチンが発売されることによってトレドミンの存在
価値が無くなるわけでは無いと思います(減りはするでしょうが)。逆にランセット
レポートはデュロキセチンに極めて厳しい結果を突きつけましたが、あまり
抗うつ薬を一つの論文でランキングするのは意味のない行為かも知れません。
…でもやっぱりバイアスの入った目で見てしまいますよね。

個人的には、デュロキセチンのあやふやな抗うつ効果よりも、むしろ疼痛抑制薬
としての活躍に少し期待しています。持続的な神経痛の原因の一つとして、
脳→脊髄の下行性疼痛抑制経路が上手く働いていない可能性があります。
この経路はセロトニンとノルアドレナリン神経による支配を受けていると
言われており、両者を回復させることで痛みが改善する可能性があるわけです。

実際にこの用途で一般的に使用されている抗うつ薬はトリプタノールですが、
副作用の少ないサインバルタの方が都合良いはずです。神経痛の薬には今まで
メチコバールやメキシチール、ノイロトロピンなどが使われてきましたが、どれも
作用はイマイチで服用回数も多いモノばかりでした。米国ではすでに線維筋痛症
や糖尿病性疼痛への適応を取得しています。日本でもこのような用途に転用
できれば、サインバルタの社会的役割はより増えるのではないでしょうか。

…もちろんファイザーから今年中に出るであろうナースエンジェル・リリカたんが
美味しいところを全てさらっていく可能性も否定できませんがwww

副作用の観点から見て、頻度の高いのは吐き気・眠気・下痢などです。実に5割が
眠気を訴えるレメロンに較べれば日常生活はしやすいものの、消化器症状の
発現性はNASSAに較べれば多く、パキシルと同程度と考えられます。
しかしこれらの副作用は最初の一週間を超えれば激減するとのこと。従って
薬に慣れる期間は20mg、慣れたら40mgという服用方法になります。アリセプトの
ような感じですね。1日1回なので、トレドミンに較べれば服用が楽です。

薬価的には20mg1カプセル169.3円で、レメロン15mgと同額です。臨床用量が
40mg以上だとすると、ちょっと高い印象をうけますね。もちろんトレドミンに
較べれば大幅に高いです。というよりトレドミンが安すぎなのか?ルボックスより
安いです。発売時期が明らかに悪かったですね。

リリーMRの強気な発言にはちょっと笑いましたが、トレドミンとサインバルタの
間には養殖フグと天然フグほどの値段の差があります。この価格に見合うほどの
価値があるかどうか?今年はサインバルタにとって試練の年になりそうですね。
少なくとも私には、養殖フグと天然フグの味の違いは分かりません…。
○味しんぼの登場人物にはなれそうにないです。
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by haya by hayanoya | 2010-05-02 22:21 | ちびまる向ちゃんトピ
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