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ちびまる向ちゃん(100)
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沖浦カントク帰ってきたー!人狼の続きがみれるんじゃー!
っと思ったらなんじゃこのハートフル路線はーっ! 方言がモロ地元で懐かしいのう。ほいじゃが主人公の女の子が いつセクトにオルグられて地下に潜って「おばあちゃんのおみやげ」を 爆発させるんかワシャ気が気じゃ無かったわい。 …というわけで、「ももへの手紙」絶賛上映中。見るべし。 ジプレキサを取り上げたらこいつもセットで擬人化せねばなるまい。 って事でGW特番の二番目は抗精神病薬一のトリックスター、セロクエル! 何故かセロクエルの擬人化はやたらと多い希ガス。色付き錠のせいか! 一般名はクエチアピン。 発売はアステラス(旧藤沢)。 規格は25/100/200mg。 愛称は「けせら」。 表面はおとなしそうな鎮静系の薬という 皮を被りながら、なんか腹に一物抱えて そうな気を許せない執事のイメージ。 標準量の個人差が非常に幅広いので、 とらえどころのない幽霊スタイルです。 25mgと100mg以上では別の薬のような働きを見せるため、あえてオッドアイ と致しました。別名厨二眼。いつか使おうと思っててすっかり忘れていた ので、急遽付けたらオッドアイ執事という非常にありがちな設定に(汗 髪と両目は錠剤の各規格の色です。セロクエルはバラ錠でコンタミしても すぐに分かるので、擬人化絵師だけでなく精神科の薬剤師にも人気がありますw どうせなら200mgも青色かなんかにすればよかったのに。 服のカラーリングは200mg錠のパッケージから。アステラスの箱はどれもこれも 配色センスが大層悪いと思ってます。上品な藤沢箱から原色バリバリの アステラス箱に変わって愕然としたのは俺だけではあるまい。 手に持ってる羽根は、D2受容体とか色々フェザータッチする用です。エロス! イギリス系だが、生まれも育ちも米国人。じぷりーとは幼馴染みだったりするが、 実家が英国のためあまり家庭のバックアップを受けられず、じぷりーの様に 派手なデビューは出来なかった。しかし抜群の頭の良さと底知れない魔法力で 一部ではじぷりーを凌ぐ程の評価を受けており、けせらの知名度は急速に 広まっていく。日本の注目度も高まっており、海外妖精のホームステイに定評の ある藤沢家が熱心にラブコールをかけていた。このため日本への招聘は非常に スムーズに行われ、じぷりーよりもやや早く学園に登録された。これにより、、 殆どの薬を眼中にして無いじぷりーですら一目置かざるを得ない存在となった。 じぷりーと共にSクラスに配属され、ほぼ即日でぱだ子やぴぜ子を抜き去り クラス成績のワンツーを二人で飾る。学園はぱきるを招聘したとき以上の興奮に 包まれ、彼女らの加入によってDクラスとSクラスが今後学園を引っ張っていく 存在になると誰もが確信するようになった。 しかし、Sクラスにおいてじぷりーはどんどん増長していった。じぷりーに意見 できるのは同格のけせらだけなのだが、彼女はクラス内のもめ事に全く興味が 無いばかりか、その中性的な容姿でクラスの連中を落としまくっていたのである。 これにより、Sクラスは加速度的に歪んでいく。 結局じぷりーに同行する形で、けせらもSクラスから離反することになった。 本人は「じぷりーの起こすトラブルが面白いから」などと主張しているが、単に Sクラスで手を付けた同級生達が争奪戦状態となり、事態の収拾を図るのが 面倒になって放り出したに過ぎない。じぷりーとけせらが抜ける事でSクラスは ガタガタになり、組織力が大幅に低下した。そして学園の注目はEクラスおよび じぷりーが自称するEsクラスに移っていくのである。 「Que Sera」の名の通り、執着心がまるで無い。天然ジゴロの肉食系百合っ子で、 気に入った子は凄まじい情熱で口説き落とすが、気まぐれで飽きるのも速い。 最近はえび華に対してアタックをかけているが、えび華に全くその気はなく、 つれなく断られ続けている。おかげでEクラスの連中は今のところけせらの 毒牙にかかっておらず、比較的良好な人間関係を保っている。 なお、じぷりーとは幼馴染みであるが恋愛には至っていない。本人曰く ケバすぎて好みではないらしい。 その気になればEクラスどころか学園の代表になれるだけの魔法力を持って いるが、本人に出世欲はまるで無く、Esクラスに所属しながら感情調節魔法の 資格を取ろうとすらしない。単純な向上心で動く分、じぷりーの方がまだ扱い やすいというのが技官達の評。彼女という規格外のために、能力試験の出題を まるまる書き直すハメになることもあり、心労で倒れる者まで現れる始末。 「鬱になったらけせらに治してもらうさ」とは技官達の笑えないジョークである。 セロクエルの誕生秘話は、ダイヤモンド社の「新薬誕生」が詳しいです。 それによると、セロクエルの主成分クエチアピンは英国の化学合成企業である ICIの米国支社において合成されました。開発の経緯はイーライ・リリーと同様、 クロザピンライクに効く類縁物質を模索する過程で発見されており、合成 されたのも1980年代初頭でオランザピンとほぼ同時期です。永遠のライバル ジプレキサとは、生まれたときから鎬を削りあう宿命だったのです。 ICIは化学合成をメインとする企業で、医薬品開発は副業でした。従って クエチアピンが生まれた時も感動は薄く、むしろ当時の主流から全く外れた 弱いドパミン遮断薬だったことを訝しむ声さえありました。研究者達は なんとか上層部を説得し、1993年にようやく第Ⅲ相試験までこぎ着けます。 この年にICIは医薬品部門を切り離し、ゼネカ社を設立しました。これにより 上の顔色を伺うことなくクエチアピンの開発を進められるようになりましたが、 当時のゼネカ社はクエチアピンよりも喘息薬のザフィルルカスト(アコレート)に 注目していたようで、結局クエチアピンに潤沢な予算は回って来ませんでした。 1996年に第Ⅲ相試験を終了した時点で、研究者達はクエチアピンが双極性障害や 大うつ病に転用できる可能性があることをに気づいていましたが、そこまで 試験を行うだけの予算もなく、結局抗精神病薬としてFDAに販売申請を行います。 97年、クエチアピンは無事FDAの審査を通過し、セロクエルとして米英で発売 されました。既にプロザックで精神科領域に大きな名声を得て、しかも1年前に ジプレキサを発売していたリリーに較べ、ゼネカ社の精神科に対する知名度は 0に等しく、非常に不利な条件からのスタートでした。更にFDAで設定された 常用量は現在の水準からみるとかなり少なく、効かない薬の認識を持たれました。 販売当初の市場シェアはわずか1%で、完全にスタートダッシュに失敗したのです。 にも関わらず、ゼネカは辛抱強く精神科医に売り込みを続けました。そして セロクエルの副作用の少なさや、用量を大幅に増やしてもリスクが増えない 忍容性の高さが医師・患者両方から注目され、次第に売り上げを伸ばしました。 99年、ゼネカ社はスウェーデンのアストラ社と合併し、アストラゼネカ社と なります。アストラ社は中枢領域の薬に造詣が深く、セロクエルは更に強力に 宣伝され、予算もふんだんに使えるようになりました。これにより双極性障害の 臨床試験が開始され、2004年には躁症の、2006年にはうつ症の適応をFDAから 取得することに成功します。ライバルのジプレキサは4年早く躁症の適応を 取得していますが、うつ症適応はプロザックとの合剤で獲得しており、単剤で 躁うつ両極に適応を取ったのはセロクエルが抗精神病薬初になります。 この適応追加によりセロクエルの売り上げは加速しました。2004年には21億ドル、 2006年には34億ドル、そして2007年には40億ドルを突破し、ジプレキサと 完全に並びます。2011年には57億ドルに達し、とうとうジプレキサのピークを 抜き去りました。しかし2012年3月に米国で製造特許が切れたため、今後は ジプレキサと同じく続落していく事でしょう。ファイザーやリリーのように 最初から潤沢な資金を使った強力なプロモーションで売り上げるのではなく、 現場の医師や患者の評判で名声を上げて世界的な薬となったセロクエルは、 精神科界の豊臣秀吉、あるいは劉備元徳と言って良いかも知れません。 しかし感動のプロジェクトX薬セロクエルの、国内の評判は今イチです(笑) セロクエルが本邦発売されたのは2001年2月で、ジプレキサより4ヶ月前ですが、 両者の製造承認は同時期の2000年12月に下りています。元々セロクエルは アストラゼネカの薬ですが、国内では藤沢薬品が単独で臨床試験を行っています。 ジプレキサは米国イーライ・リリー社の日本支社が行っており、精神科に強い 藤沢と、イチから販売網を作る必要があったリリーの対応力の差が4ヶ月の 発売時間の差を生んだものと思われます。とはいえ、感覚的にはほぼ同時期に 発売された印象があり、当時の私の勤務先でもコンペティションが行われました。 コンペの詳細は覚えてませんが、副作用の少なさや錠剤の飲みやすさなどが 評価され、セロクエルに軍配が挙がっていました。…結局両方採用されたけど。 今から思うに、ジプレキサは10mg錠の薬価が500円を超えるというインパクトが 強烈すぎてあまり良い印象が無かったかも知れません。セロクエルは100mg錠で 200円程度で、相対的に値頃感があったのです。25mg錠もあるし、多く使っても せいぜい300mgまでだろう…と当時は思っていたのでした。ところがセロクエル の推奨使用量はどんどん上がり、平均で400~600mg、海外では800mg飲まないと 意味が無いとかいう報告まで出てくる始末で、気がつけば一日薬価が1000円を 超える最も高コストな抗精神病薬となっていたのです。恐ろしい子! この高い薬価と、25~750mgという桁違いの用量設定の難しさで、扱いづらい 印象があったのです。更にドパミンD2受容体への非常に緩い結合プロフィールは 統合失調症の陽性症状に対処出来ないのではないかという懸念があり、実際に しばしば押さえ込みに失敗することがあります。失敗の多くは一日服用量が 少ないために起こっていると思われますが、海外の標準量である600mgを服用 するためには100mg錠を6錠も飲むハメになり、コストもさることながら コンプライアンス面で問題がありました。メーカーがこの状況に対して200mg錠 を発売したのは実に発売8年後の2009年です。これらの点から、国内セロクエル の売り上げは2011年度で260億と、ジプレキサの半分程度になっています。 クエチアピンの構造はジベンゾチアゼピンで、クロザピンのジアゾ部分のNを 1個硫黄に置換した形がベースです。このベース型も向精神作用を持っており、 Wonder社でクロザピンが合成された際、ついでにクロチアピンとして見出され ました。クロチアピンはクロザピンと共に日本に持ち込まれ、大日本製薬で 治験されました。クロザピンは重篤な副作用で治験中止となりましたが、 クロチアピンは無事終了し、デリトンの名で発売されます。しかし当時の日本は ドパミン仮説全盛期、D2受容体タイトでない薬はそれだけで見向きもされず、 セレネースに隠れてデリトンはろくに売れないまま製造中止されてしまいました。 陰性症状の改善などを特色としており、クロチアピンもクエチアピンと同様の 非定型作用を持っていたのでは無いかと思われます。セロクエルに30年先駆けて 発売されたMARTAかと思うと、余りに早すぎた発売と市場の撤退が惜しまれます。 クエチアピンとクロザピンは(おそらくはクロチアピンも)ドパミンD2受容体への 結合が非常にゆるい薬です。これに較べると、オランザピンはまだ定型薬に近い 結合力を示します。抗精神病作用を示すにはD2受容体占拠率が60~80%必要だと 言われていますが、クエチアピンはせいぜい30%ほどしか作用しません。一体 何故これだけの力で抗精神病薬たり得るのか、発売当初は皆頭を悩ませました。 この矛盾を修正するため、「修正ドパミン仮説」なるものが提唱されました。 ドパミン系は大脳皮質から大脳辺縁系に向けてフィードバック回路が存在し、 皮質の正常なドパミン流通が辺縁系の過剰な働きを抑制しているという仮説です。 従来、統合失調症は大脳辺縁系D2受容体の過感受性により陽性症状が起こり、 それによって燃え尽きた結果が陰性症状だと思われていましたが、この仮説に よるとむしろ逆で、大脳皮質においてドパミンの分泌が不足して陰性症状が 起こり、皮質ドパミン系の機能不全によりフィードバックが働かず、結果 辺縁系でドパミン系が過活動になり陽性症状が引き起こされると説明されます。 確かにこの説明であれば、ドパミンD2遮断をさほど必要としません。重要なのは 皮質におけるドパミン機能不全の改善です。クエチアピンはこれに対し、 後シナプス5-HT2Aおよび前シナプスα2遮断によってドパミン分泌を促します。 皮質のドパミン系が改善すれば、フィードバックによって辺縁系の過活動も 収まるという理屈です。…とはいえ、この仮説だけだと同じような薬理を持つ ミルタザピン(レメロン)が抗精神病作用を持たない理由を説明できません。 やはり、小さいとは言えD2を叩く事に意味はあるのかも知れません。400mg程の クエチアピンを投与すると、一過性にD2占拠率は60%になり、12時間後には その1/3程度になります。このフェザータッチ(笑)も重要な行為なのかも? これに意味があるとするなら、1回服用量をなるべく多くする必要があります。 クエチアピンの半減期は6時間程度と極めて短いため、1日2~3回の分服が必要と 添付文書に記載されていますが、それぞれを200mgで服用するよりも1日1回を 600mgで服用する方が良いことになります。まさかのPKPD理論! また皮質→辺縁系のフィードバックにはグルタミン酸経路が関わっているため、 NMDA受容体系を促進させる何かをしている可能性もありますが、詳細不明です。 従って25mg錠程度だとD2遮断的には統合失調症に対してほとんど意味が無く、 何のために存在するんだよ!と言いたくなります。25mg錠は初期の副作用発現を 防ぐために作られたと思いますが、最近ではいきなり100mg錠を投与しても ほぼ問題ないと言われてます。ただD2遮断以外の作用が複合的に影響することで、 老人のせん妄や認知機能の改善などが見込めるとされ、その副作用の少なさから 継続的に少量投与が続けられる事があります。神経症レベルでイライラしている 際に、ベンゾジだと依存が生じるのでセロクエル少量を頓服的に使用するという 意見もあり、なんだかんだで存在意義があるようです。 いずれにせよ、クエチアピンにとって辺縁系のD2を叩くことはメインの薬理作用 ではなく、この為に多くの精神科医は「セロクエルは信用できない」と考えて います。陽性症状を完全に押さえ込むにはクエチアピン単剤だと弱く、かなりの ケースで他の抗精神病薬を必要とします。ただ逆に言えば、D2遮断薬があまり 効果を示さない統合失調症患者に有効性が高いとも取れるので、抗精神病薬と して価値がないわけではありません。 とはいえクエチアピンは統合失調症よりも、むしろ気分障害治療に向いていると 考えられています。オランザピンに無い5-HT1A遮断作用、強いα2遮断作用で 双極の躁うつ両面に対して安定した抑止効果を発揮します。さらに5-HT2C遮断が 無いため食欲増進が弱く、抗コリン作用もほとんど無いので長期で服用しても 患者満足度は高いです。更にクエチアピンの代謝物であるノルクエチアピンは 5-HT2A遮断がより強く、ノルアドレナリントランスポーター遮断作用が強化して いると言われており、クエチアピンがオランザピンに較べて抗うつ作用が強い 根拠の一つになっています。ただ日本で一般に販売されている速崩錠だと ノルクエチアピンはほとんど産生されず、海外のXR錠で意味があるようです。 多くのガイドラインで、クエチアピンはリチウムと並び双極性障害治療の 第一選択に選ばれています。うつエピソードに関しては、むしろリチウムや ラミクタールよりも推奨されています。比較的強い抗うつ作用があるにも 関わらず躁転を起こしにくい理由として、ゆるいD2遮断作用がドパミン系の 暴走を抑制している可能性があります。単一の大うつ病に対しては既存の 抗うつ薬に代替するものではありませんが、双極うつとなるとクエチアピンに 匹敵する抗うつ薬は存在しません。オランザピンですら敵わないと思います。 にも関わらず、国内でセロクエルは双極性障害に対して今のところ適応を取って おらず、関係者は歯痒い思いを抱いています。ジプレキサやエビリファイが 近年立て続けに双極躁の適応を取得しましたが、躁症はぶっちゃけロドピンや バルネチールや他の気分安定薬でかなり代替できる部分です。双極うつに対し まともに期待できるのはリーマス・ラミクタール・セロクエル、おまけで ジプレキサくらいのものなので、厚労省はアステラスを急かしてはいるよう ですが、2012年5月現在でセロクエルの双極うつ適応追加は第Ⅲ相試験から 進んでいません。アステラス的には2010年問題の穴埋めでそれどころでは 無いのでしょうが、マイスリーCRの開発中止、ルボックスのアボット返却なども 含め、旧藤沢の中枢薬が冷遇されている状況を見ると悲しくなってしまいます。 エミレースを単独開発した頃の熱い山之内よ帰ってこい! (あーヲタってメーカーにとっては迷惑な存在だよねー…と自分で納得) |