以前の記事
2018年 04月 2017年 11月 2017年 05月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 10月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 01月 2015年 09月 more... タグ
ちびまる向ちゃん(100)
クスリあれこれ(39) 薬剤師(11) 薬の擬人化(9) 漫画(6) 頂き物(5) アモバン(3) リボトリール(3) ロヒプノール(3) パキシル(3) エビリファイ(2) マイスリー(2) エバミール(2) ルネスタ(2) Sonata(2) ジェイゾロフト(2) デパス(2) ラミクタール(1) ドラール(1) ドグマチール(1) ライフログ
検索
お気に入りブログ
Favorite Link
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
いつの間にか1年以上過ぎとる!?
いやー実に長いこと放置しまくってました。 こまめにコメントを頂いて誠に申し訳ないです。 ぼちぼち返信を入れさせて戴きます。 リアルが忙しかったのだと言うとリア充っぽくて格好いいのですが どうにも全くそんなことは無く、単にスクフェスにハマっていただけです(汗 いやー反射神経も動体視力もリズム感も無いと音ゲーってキツイっす。 超難関フルコンするのはいつの日になるやら…でも多分デレステも手を出すw さて件のベルソムラですが、擬人化するつもりはむろんあった!…あったのだが MSDの凡庸なパッケージと薬としての無個性な性能にイメージがまるで湧かず、 3回くらい描き直してようやくこじつけました。 ※年数が経っていても画力が上がらないのは仕様です。むしろリハビリが必要。 一般名はスボレキサント。 規格は15/20mg。 愛称は「べそ村さん」。 特にさん付けしていることに 意味はないですが、なんか 呼び捨てが憚られるので。 MSDは業界No.1のインテリ会社なので ちょっと偉そうな学士さんタイプが お似合いなのですよ。 MSDといえば「白骨」とまでいわれるデザインしづらい真っ白で画一的な 個装箱が有名ですが、それをモチーフにすると思い切りとり乃先生と被るので 今回は無視する方向で。青は20mg、赤紫はベルソムラのシンボル?カラー。 デコの広さで頭の良さを演出。前髪切り過ぎちゃった系描いたこと無いので。 ダボダボ気味のアカデミックガウンは無駄にサイズのでかいPTPを現しています。 学士帽はまんま20mgPTPです。錠剤を頭に乗っけるのはロシュ直系だけという 学園の擬人化ルールに違反しているような気がしますが、まー彼女は次世代 睡眠薬の教導者的存在なので問題無いでしょう(いい加減 肩にかけてるケープを広げるとMSDマークになりますが分かりませんね。 右手に持ってるのは医師から患者まで幅広く愛用されている医学の聖典、 「メルクマニュアル」でございます。てことは一応医学生なのか?学園には 既にアミノフ先生という校医がいたような気がしますが、セクハラしてばかりで 評判が悪いので彼女を後釜に据えるつもりなのかもしれません。 性格はとにかく「退屈」の一言です。 もうとにかく一般的なことしか言わない。医師よりも公務員に向いてます。 話を膨らませる能力が決定的に欠け、「人それぞれ」「ケースバイケース」で 会話をシャットダウンさせてしまうテンション下げる系女子。適度な運動と 食事と睡眠をとれば病気なんて起こりませんから、とか言っちゃう。 やる気の源オレキシンを遮断する彼女に相応しい人となりと言えましょう。 アミノフ先生とは別ベクトルで嫌がられそうなお医者さんの卵です。 趣味は寝ること。成長ホルモンが出るお肌のゴールデンタイムを信じており 夜10時からきっちり10時間睡眠を取っています。おかげで肌は綺麗ですが、夢を 見せない魔法力のせいか平坦な胸はいつまで経っても残酷な現実のままです(笑 メルク家はドイツ系米国人の一家で、才人を多数抱える非常に優秀な一族だが、 本国学園とのつながりは意外にも薄く、わずかにDクラス准教授のとり乃、 旧オルガノン家の養女であるれめる・てとらを輩出するのみである。 べそ村さんはとり乃以来久々に生まれたメルク家直系の学園生であるが、 入園当初から既に新人としてでは無く、学園全体のナレッジを向上させる存在と して期待されている。またBクラスは酔っ払いやジャンキーなどの性格破綻者 ばかりが集まっているので、そういった連中の性根を矯正する役割も求められて いる…のだが今のところ講演が忙しくてクラスにあまり顔を出せていない。 クラスメイトよりも学園の技官達にモテモテである。 ただ彼女の能力は外見上平凡な(むしろ弱めの)魔法なので、クラス連中には さほど脅威と感じられていない。担任のべざり先生にはよくある中長期型被験生 としか思われておらず、ちゃんとクラスに溶け込めるか心配までされている始末。 だが創薬王メルクの血筋は良かれ悪しかれ世代交代を決定づける力を持つ。 かつてTCAのとり乃がりた率いるMAOIの勢力を壊滅せしめたように、 べそ村さんの到来もまた、BZD睡眠薬時代の終局を予感させるのであった。 そしてその変革の波は、この後すぐに訪れる…。 MSD(Merck Sharp and Dohme)、俗称米国メルクという会社は、イノベーション という言葉をおそらく世界で最も体現している製薬企業ではないでしょうか。 ファイザーやグラクソが吸収合併した会社の医薬品によってメガファーマに なったのとは対照的に、メルクはほとんど自社製品の圧倒的なオリジナリティに よって世界的企業に駆け上がりました。古くはストレプトマイシンやコルチゾン、 はしかワクチンなどの合成に始まり、その後も常に時代時代の主要医薬品に名を 残してきました。血圧薬におけるアンジオテンシン受容体遮断薬、糖尿病薬に おけるDPP-4阻害薬、鎮痛薬におけるCOX-2阻害薬、骨粗鬆症薬におけるビス フォスフォネート製剤、育毛剤における5-α還元酵素阻害薬、AIDS治療薬に おけるHIVインテグラーゼ阻害薬など。過去の薬を終わらせ、現在医療の第一線で 当たり前に使われるようになったこれらは、全てメルクが先鞭をつけた薬です。 どれか一つを作るだけでも製薬史上に名を残す偉業を、しかも幅広い分野で 実現させているメルクの創薬力は尋常ではありません。これは現在も無料で 公開されている、医学・治療に関する情報と指針「メルク・マニュアル」を 100年以上の長きにわたって提供し続けていることと無関係では無いでしょう。 人体に関する広範囲で深淵な知識をバックボーンに持ち、さらに企業の創始者 ジョージ・メルクの提唱した理念「医学は人のために有り、利益は後から 付いてくる」事を今なお忠実に守っているからこそ、メルクは常に世界で最も 尊敬される製薬企業としての地位を譲らないのです! …え、バイオックス?何のことかな? ちなみに日本でメルク社ではなくMSD社と名乗っているのは、独国メルク社との 協定によるものです。独国メルク社は1887年に米国にメルク子会社を設立 しましたが、この子会社は第一次世界大戦時米国に接収されてしまいました。 この時点で米メルクと独メルクの資本的な関係は断絶します。その後はそれぞれ 別の道を歩み、米メルクは1953年にシャープ&ドーム社を合併します。これが MSDの由来です。独メルクは結局鳴かず飛ばずで独国の中堅製薬企業に収まり、 世界的には遙かに米メルクの方が有名なのですが、独メルクとの混同を避ける ため1955年に協定を結び、米メルクがメルク社を名乗るのは米国とカナダのみで それ以外の地域ではMSDを名乗るようになりました。日本では長らく米メルクの 子会社となった万有製薬の名を残していましたが、2009年のシェリング・プラウ 合併を機に、世界的標準に合わせてMSD株式会社に名を改めました。 抜群の創薬力を誇るメルクですが、意外にも中枢神経分野ではほとんど活躍して いません。有名なのはトリプタノールくらいです。ワイパックスの先祖である 3-OH系ベンゾジアゼピン抗不安薬ハイロングは販売不振で製造中止になりました。 SSRIのジメリジンが欧州で好評だった時に米国での販売を試みましたが、ギラン バレー症候群という重篤な病状の発症に関与しているとされてお蔵入りになって います。以来長らく不遇の時代を過ごしてきましたが、2009年にシェリング・ プラウ社を合併したことでテトラミド・レスリン・レメロンを手に入れ、 ようやくMSDが精神科医に挨拶できる材料ができました。そして2014年12月、 冷遇されていたMSDの精神科担当MRが待望していた自社製品、ベルソムラが 発売されます。 ベルソムラはメルクにとって久々の精神科薬でありながら、メルクに相応しく 実にエポックメイキングに満ちた薬であり、長らく睡眠薬市場を支配してきた ベンゾジアゼピン勢力を駆逐する可能性を秘めています。従来の睡眠薬が 無理矢理脳を沈静化させることによって「汚い眠り」を誘発するものであると するならば、ベルソムラは文字通り belle som = beautiful sleep、自然で 美しい眠りを生み出すべく開発された薬、オレキシン受容体遮断薬なのです。 オレキシンは何度かウチのブログでも取り上げた事のある生理活性ペプチドです。 2人の日本人が、遺伝子から孤立受容体を作り、それを撒き餌にして食いつく リガンドを探り当てるという「逆薬理学」と呼ばれる釣りのような手法を用いて 釣り上げました。発見当初は摂食中枢を司るホルモンだと思われていましたが、 オレキシン系を欠落させたマウスがナルコレプシーと似たような症状を示した 事から、どうやら睡眠と覚醒を調節する方がメインの役割なのではないかという 事が明らかになりました。そこからオレキシン受容体に結合する薬物の研究が 急速に発展することになります。 オレキシン受容体を賦活させるとドパミン・ノルアドレナリン・ヒスタミンなど 覚醒を司るモノアミン系が活性化し、ヒトのアクティブな行動が強化されます。 オレキシン系を遮断すると覚醒中枢と睡眠中枢がシーソーの様に交互に活性化し 起きていると思ったら突然レム睡眠に陥る「ナルコレプシー」症状が現れます。 すなわち、オレキシンはこのシーソーを覚醒側に安定させる作用を持つのです。 オレキシン点鼻スプレーによって24時間働ける社畜を量産!…する方向は実際 検討されているのかどうか分かりませんが(汗)先に製品化されたのはその逆作用、 オレキシンの働きを制限する薬でした。オレキシンを遮断する、つまり意図的に 疑似ナルコレプシーを誘発するのがオレキシン受容体遮断薬という事になります。 オレキシン受容体遮断薬は大きく2種類に分けられ、OXR1およびOXR2と名付け られています。OXR1はドパミンやノルアドレナリンなどの情動モノアミン系に 広く分布しており、OXR2はヒスタミンなどの知覚モノアミン系に分布しています。 情動系と知覚系はどちらも覚醒の維持に関与しているので、一方だけ遮断しても 意味がありません。従ってOXR1・R2どちらも遮断しうるデュアルオレキシン 受容体遮断薬、DORAが新しい睡眠薬として期待されました。 アクテリオン社のアルモレキサントやグラクソ社のSB-649868などが他に開発 されていましたが、これらは毒性などの問題により開発中止となり、製品化に こぎ着けたのは今のところMSDのスボレキサントのみとなっています。 これを追うのはエーザイの治験薬E2006、より短時間型のDORAとして期待される レンボレキサントですが、まだ臨床試験フェーズⅢ準備段階であり商品化に成功 しても市場投入は当分先のため、ここしばらくはベルソムラの独走状態が続く ことになるでしょう。 スボレキサントは骨格の中心に二つの窒素を含む七員環、ジアゼパン環を持つ 構造です。これは他のメーカーの開発品には存在しません。ベンゾジアゼピン・ 三環系抗うつ薬・MARTAなど成功した向精神薬は比較的七員環を含む構造が多い ので、この時点でスボレキサントの成功は約束されていたのです(ホントか? なお~orexantという一般名のステムはOrexin antagonistの略なので、これらは 似たような名前を持っていても似たような構造式を持っているとは限りません。 ベルソムラを服用すると、オレキシン系からの覚醒中枢への入力が弱まり、 相対的に睡眠中枢の支配力が高くなることで睡眠へ移行します。これはベンゾジ アゼピンやバルビツールの様に脳内の抑制系(GABA)を強化する作用とは全く 異なる薬理です。GABA系を強化する薬は睡眠構築にも影響しREM睡眠の増加や 深睡眠の減少など質の悪い睡眠を促す事がありますが、オレキシンを遮断する薬 だと睡眠自体はほとんど薬の影響を受けません。これが「美しい眠り」を取れると 言われる所以です。 GABA系睡眠薬で無いと言うことは他にも様々なメリットが生まれます。従来の 睡眠薬はどれも同じような作用を持つため、不眠が続く場合に薬を追加されても それが同系統の薬である場合が多くなります。ベンゾジアゼピン類を複数併用 しても結局結合部位は同じなので効果は増強されず、筋弛緩や半減期上昇など デメリット面ばかり増えてしまいます。2014年4月から施行された向精神薬処方 ルールにより同系統の薬を処方される頻度は大分少なくなりましたが、それでも 抗不安薬と睡眠薬で同じベンゾジアゼピンを4種服用するという例は見られます。 こういう場合、たとえば抗不安薬にメイラックス、睡眠薬にロゼレムとベルソムラを 配置するだけでもより効率的な不眠コントロールができるようになります。 (ベルソムラはまだ発売して1年経ってないのでこのルールの適応外ですが、 2015年12月からは睡眠薬の1剤としてカウントされるようになるでしょう) 更に、GABA系睡眠薬は服用を続けることで耐性、断薬時の反跳性不眠を生じる 場合があります。欧米ではベンゾジアゼピン類を長期で漫然処方しないよう きつい縛りがなされています。日本でもかつて睡眠薬は2週間しか処方できず、 それがベンゾジアゼピンの蔓延を防いだ(と同時にデパスがばらまかれた) わけですが、外来の精神疾患患者の増大とともに制限が30日に拡大され、 それに伴いここ10年で欧米と同じように乱用が問題になってきました。 ベルソムラは1年間服用を続けても耐性を生じず、また服用を辞めた際にも 不眠時間が一過的に上昇したケースはプラセボ並みです。睡眠薬はリバウンドが 怖いからやめられないという声も多いので、これは明らかにメリットです。 またGABA系の睡眠薬は元々働いているドパミンA10神経のGABA抑制系の働きを 弱め、「脱抑制」という作用を起こすことがあります。これによりA10神経が 活性化て多幸感などを引き起こし、ベンゾジアゼピン服用を習慣づけてしまう 依存性が問題になっております。オレキシン受容体遮断薬はそもそもモノアミン の活性化を抑える薬なので、こういった精神的依存が発生しにくいと思われます。 でも疑似ナルコレプシーって怖いやんと思われるでしょうが、スボレキサントが 結合するのはオレキシン受容体の6割前後と言われており、フルアンタゴニスト ではないのでオレキシンの活動が活発な日中に飲んでもさほど影響は無いと 言われています。一般人は夜間にオレキシンの活動が激減するため眠りにつき ますが、不眠症の場合は夜間でもオレキシン分泌が比較的高く、ベルソムラは そういうゾンビ的に活動しているオレキシン系にとどめを刺す薬なのです。 …とまぁ、医師や社会側にとっては非常に有用な薬なのですが、実際に服用する 患者側の声を聞いてみると「非常に効いた」/「全然効かなかった」と評価が 両極端に分かれる薬であるようです。背景をさっ引いて純粋な睡眠薬として ベルソムラを判断すると「効いてるかよく分からない上に朝に残る薬」という およそ既存のダメ睡眠薬と全く変わらない特徴を持っています(笑 ベルソムラはGABA系睡眠薬のように飲むと睡魔が襲ってくる薬ではありません。 なんとなく睡眠への抵抗力が無くなっていく薬なので、効いている実感が無い のです。体質的な相性もあり、オレキシン系が活発な不眠症であれば抜群に 効くでしょうが、オレキシン系に異常の無い不眠症だとプラセボ以上の効果は 得られないでしょう。ここら辺が脳の機能をシャットダウンし背景がなんであれ とりあえず眠らせることのできるGABA系睡眠薬との違いです。 さらに半減期が約10時間と今時の睡眠薬としてはかなり長目。 メーカーは翌朝起床直後の認知機能低下は見られなかったと主張していますが、 実際眠気が残ったという報告はかなり存在します。いったん完全に起きて しまえばオレキシンが大量に分泌され薬の影響も無くなるでしょうが、 うつらうつらする時間が長い人にとってはつらい薬です。もっとも服用直後に 効く薬ではないので、睡眠直前に服用する必要は無いかも知れません。 夜10時あたりに服用し、ゴロゴロしてるうちに眠たくなって就寝、朝8時頃に 薬の効果も切れる…という使い方でも良いのでは無いでしょうか。 副作用的に既存の睡眠薬とあまり違うものは見られませんが、何故か多いのが 夢に関する報告です。悪夢を見るようになったり、逆に悪夢にうなされていたが 全く見なくなった、などこれまた正反対の意見が見られます。夢はドパミン系に 影響を受けやすい副作用なので、オレキシン遮断によりこの系が低下することで 夢の見方に何らかの影響が出るのではないかと思われます。もっとも、服用を 続けることで悪夢は段々消退するケースが多く報告されています。 薬理作用的にはモノアミンの活動を妨害する薬なので、短期的にはともかく 長期の服用で気分障害などの症状を悪化させる危険性が無いとは言えません。 うつ病患者への投与も大体の患者では問題無いのですが、自殺念慮の強い患者 に対して使うのは注意が必要かもしれません。こういう場合、GABA系睡眠薬だと 鎮静効果が強いのでベルソムラより有用になります。もちろん鎮静系抗うつ薬の デジレル・レメロンなどの方がよりベターだと思われます。 CYP3A4および腸管P糖タンパクを阻害能により、薬物相互作用が存在します。 ケトコナゾール400mgとの併用によりベルソムラ血中濃度時間曲線下面積(AUC)が 180%ほど上昇したため、似たような酵素阻害能を持つイトリゾール、クラリスの 併用が禁忌になっています。イトリゾールはともかくクラリスは耳鼻科/内科で 繁用される抗生物質なので、風邪引きの際にはベルソムラ服用の旨伝えておいた 方が良いでしょう。まぁ万一誤って併用したところで、一過性であれば ベルソムラの効果が少し増えるだけでさほどに影響はないと思います。 用量は通常20mg、高齢者は15mgとなっていますが正直微妙な違いなので、 15mgで効果が無かった場合に20mgで効果が出るとも思えません。一方で 15mgで強すぎた場合に20mgを半分に割ろうにも、常温一ヶ月で表面がクラック するなど湿気に弱いので一包化ができず割線もついていないという微妙に 調節しづらい薬です。患者側でPTPから取り出した後半分に割って飲むという 指導も考えられるので、せめて割線くらいはつけておくべきではないでしょうか。 ウチでは若年層でも普通に15mgで出されており、それでも結構効いてるようです。 ベルソムラは昨今の薬の中では珍しく、世界に先駆けて日本で先行発売され ました。オレキシンの発見が日本人だったことに敬意を表して…というわけでは なく、日本がベンゾジアゼピン乱用を深刻に捉えていることの現れと言えます。 新薬を優先して使えるのは有り難い一方で、蓄積されたデータが無いので 色々手探りで効果や副作用を見極めねばなりません。また2015年12月までは新薬 扱いで14日処方しかできないので、積極的に使おうとする動きは発売当初 それほどありませんでした。しかし発売後9ヶ月が経ちますがそれほど重大な 副作用は報告されていないので、ぼちぼち精神科を中心に処方が広がりつつある のではないかと思います。ベルソムラは向精神薬扱いでは無いので、長期処方が 解禁された後は他の睡眠薬のような30日制限がありません。今年の冬以降は ベルソムラを追加、あるいは切り替える動きが加速するのでは無いでしょうか。 薬価は20mgで107.9円です。これはマイスリー10mgの69.7円に較べると高い ですが、これほどの画期性を持つ薬としてはむしろ安いとも言えます。米国で 先に発売されていたらボッタクリ価格になり、それが日本での薬価に影響して こないとは思えないので、その点でも日本先行発売はラッキーでした。 しかし先の向精神薬ルールに加えベルソムラの価格を抑えた発売には、政府の ベンゾジアゼピン制限対策における本気度が見て取れます。ベルソムラが 睡眠治療に彩りを加える女神となるか、既存の睡眠薬を駆逐する死神となるか、 今後の向精神薬市場は2007年リタリン問題に匹敵する嵐が吹きそうな予感…です。 合成睡眠薬は19世紀初頭より世界で使用され始め、数多くの文豪や芸術家の 傍らに置かれました。クロラール、ブロムワレリル、バルビタール、メタカロン、 メプロバメート、そしてベンゾジアゼピン、Zドラッグ…名前は移り変われど その睡眠へ誘う甘美な魔力は多くの人を虜にして離さず、同時に数多の問題を 引き起こしてきました。しかしベルソムラはドパミンやノルアドレナリン、 セロトニンといった芸術を担うモノアミンの活動を低下させる「退屈な薬」です。 余計な感傷を滑り込ませる余地は無く、淡々と睡眠という仕事を果たしていく システマチックなスタイルは睡眠薬を特別で神秘な薬から引きずり下ろし、ただの 一治療薬に閉じ込めた感があり、ある意味新時代にに相応しい薬と言えるでしょう。 ベルソ寝間にしろしめし、世は全て事も無し。 |