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ちびまる向ちゃん(100)
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HoI4からのヴェスタリアサーガコンボでSLG漬けになってて気づけば10月。
なんかTシャツ一枚だと寒いなーと思ってました。季節過ぎるのホント早いわー。 秋アニメは夏と違って豊作ね。まほいくとかガーリッシュとかユーフォ2とか WIXOSSとか雰囲気がギスギスしてるアニメばかりで俺的には大好物です。 今年はマル向業界にとってネガティブなニュースばかりで正直テンションも 上がらないのですが、さすがにこれは取り上げなければなりますまい。 デパス・アモバン両選手、遅ればせながら向精神薬3種に指名! 今さらすぎるにもほどがありますね。1990年に改正麻薬・向精神薬取締法が 成立して以来実に26年、野放しにされ続け処方拡大の一途をたどったデパス様に とうとう法の網がかけれられました。長い間先輩薬剤師たちを悩ませ続けてきた 「なんでデパスはマル向じゃないんですか?」という後輩の質問にようやく ケリがつけられることになり喜ばしい限りですね。 つか、マル向って何?という方のために少しおさらいしておきましょう。 精神状態に影響を及ぼすおそれのある薬、これを向精神薬と呼びます。 よく抗精神病薬と混同されますが、抗精神病薬は統合失調症に使われる一部の 薬のみに使われる用語です。それに対し、向精神薬は精神状態に影響を及ぼす 全ての薬を指します。従って、睡眠薬も抗うつ薬も抗精神病薬も広義では 向精神薬扱いです。 しかしその向精神薬の中でも短時間で気分を落ち着けたり、逆に上げたりする 薬はその作用の劇的さから乱用される可能性があり、管理や投与日数に制限が かけられることになりました。これが90年に改定された麻薬・向精神薬取締法。 かつての日本では睡眠薬類に対する意識はおおらかで、「習慣性があるから気を つけなよー」という程度の扱いだったのですが、WHOでは70年代に既に 「向精神薬に関する条約」なるものが成立しており、欧米で問題視されていた ベンゾジアゼピン乱用を国際的に規制物質として取り締まる動きがありました。 日本はこれを1990年にようやく批准し、他国と足並みを揃えることになります。 このため日本で発売されている向精神薬のうち睡眠薬・抗不安薬・精神賦活剤などは 軒並み取り締まりリストに追加されました。取り締まりを受けた薬剤は 向の字をマルで囲った記号をパッケージに刻印されます。いわゆるマル向です。 マル向に指定された薬剤は他の医薬品と異なる鍵のついた場所で保管され、 伝票などもより長期間保存する必要があります。また最大の特徴として 医師が一度に処方できる最大処方日数が制限されます。 平成14(2002)年の改正ではマル向の基本処方日数制限は14日で、一部例外的に 抗てんかん薬が90日分、多くの抗不安薬・精神刺激薬が30日分までとされて いました。ところがメンタルクリニックは増加し患者も増える一方、不眠症の 患者が服薬しながら就労するのも当たり前になってくるとさすがに睡眠薬の 14日縛りは不便です。そこで多くの睡眠薬の処方制限は平成20(2008)年に 抗不安薬と同じ30日分となったのです。 処方医と薬局にとっては他の薬と同じ日数だけ出せるようになって仕事が楽に なりましたが、これが欧米と同じくベンゾジアゼピンの乱用を招き、結果として エリミンやベゲタミンの製造中止に至ったのではと考えると少し皮肉です。 まあ14日時代でも倍量処方は横行していたので制限を続けていてもあまり 変わっていなかったかもしれませんが。 多くのマル向達が日数制限の枷をはめられてた状態で、デパス(とアモバン)は マル向の指定リストから外れており、普通に100日分とかの処方が可能でした。 抗不安薬の中でも強力で、依存性もある短時間型のデパスがマル向指定から 外れていた理由はいまだにはっきりとしませんが、WHOにおける国際的な 規制物質のカテゴリー内にエチゾラム(とゾピクロン)が記載されていなかった のが主な要因と考えられます。デパスはほとんど日本でしか流通していない 薬なのです。90年成立の向精神薬取締法は国際情勢の要求によって作られた 法律のため、日本の実情をあまり盛り込んでいません。国際規制物質リストに 無くとも自国で独自に指定することも出来たはずですが、その後長い間 リストが改正されないまま放置されたのは、あるいは安価なベンゾジを過剰に叩いて 高価なSSRIを売りつける精神科メーカーの宣伝に乗せられている欧米諸国に 押しつけられた規制物質法を忌避する気持ちがあったのかもしれません。 ともあれ、デパスがマル向に指定されることで現実的に何か変わるでしょうか? 大方の関係者の予想通り、デパス・アモバンともに投与日数制限は30日までと 制定されました。最近のレセプト調査によれば、どちらの薬も院外処方の 平均日数は27日前後だったとの事です。約1割の患者が30日を超過した日数を 処方されており、その方々には不便をかけるかと思いますが9割方の患者には 影響がなさそうに思います。向精神薬加算がつくことで多少薬代は変動するかと 思いますが、20~30円程度の変化なので大きな問題にはならないかと思います。 と言うことで、普通に処方されてる人には特に意識する必要はなさそうですね。 ちなみに、厚労省が先日発表した第一回NDBオープンデータによれば、日本で 昨年度一番処方された向精神薬はデパス錠0.5mgです。入院・院内・院外処方を 含めれば、その数実に8億錠近く。デパスの1mgやジェネリックも含めた数字だと 12億錠以上となります。抗不安薬2位のソラナックス群が4億錠ほどなので実に 3倍近くの圧倒的シェアを誇り、院外処方薬の総合でも10位に入る「国民薬」と なっております。マル向に指定されることで多少シェアは落ちるかと思いますが、 それでも向精神薬部門不動の一位は譲らないのではないでしょうか。 (このNDBオープンデータは非常に興味深い内容なので、ランキング大好きな 方々は一読してみると面白いと思います。これがタダで見れるのは厚労省の 数少ないグッジョブと褒めておきたい) このシェアのせいで大概の薬局ではデパスまたはエチゾラムジェネリックを 500~1000錠単位の大箱で購入しております。今回の指定によりこれを鍵付きの 場所に保管しなくてはならなくなり、引き出しスペースがねーよ!と嘆く 管理薬剤師もいるのではないかと思います。ほらここにも一人。 薬局什器販売業者にとってはビジネスチャンスかもよ? ただ一番影響が出るのは、おそらくエチゾラムの個人輸入関連でしょうね。 海外で発売されている医薬品は個人輸入という形で処方せん無しで自費購入する ことが出来ますが、マル向に指定されるとこれが一切出来なくなります。既に ほとんどの輸入サイトでは取り扱い禁止になっているかと思います。今回の 規制ではエチゾラム(デパス)とゾピクロン(アモバン)の他、フェナゼパムと いう名のレキソタンに似た構造を持つベンゾジアゼピンも指定されています。 フェナゼパムは旧共産圏で70年代に発売された抗不安薬であり、日本では 発売されていませんが、これも個人輸入サイトでは常連薬だったようです。 今回の規制はベンゾジアゼピンの個人輸入を撲滅するのが主目的だったのでは ないかと私は邪推しております。 まぁともかくこれで、長い間矛盾が生じていたデパス何者問題にはひとつの 決着がつきました。相変わらずリスミーとかレスタスにはなんの処置も執られて ませんが、効果が弱かったり処方量が少なかったりで問題にはならないでしょう。 記念絵を描いておきました。おめでとうでぱ子! 何も考えずに配役したら4人中3人が前髪ぱっつんキャラになってしまった。 おります。見苦しい! 今回ゾピクロン(アモバン)は規制されましたがエスゾピクロン(ルネスタ)は 規制されてないんですよ。なのでルネスタは普通に30日を超えて投与可能です。 これもおそらく外国がらみで、米国規制物質法にエスゾピクロンが指定されて ないからという理由ではなかろうかと思いますが、ポスト大塚を狙ってる エーザイが厚労省にネゴったのでは?とも考えられます。実際これを受けて、 エーザイMRの内科・精神科へのルネスタ売り込みに拍車がかかっているようです。 新時代睡眠薬はロゼレム・ルネスタ・ベルソムラ!あぁまた新たな矛盾が。 後輩薬剤師達は「なんでルネスタはマル向じゃないんですか?」と先輩を いびる時代になりそうです。 あ、あとデパスとアモバンに投与日数制限がつくのは11/1からです。従って 10月末までは両者ともマル向なのに日数制限が無いという不思議な存在と なります。10/14~10/31まで、この微妙にマルいデパスを眺めて日本の 向精神薬問題に思いをはせる秋もよいかもしれませんね。 |