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ちびまる向ちゃん(100)
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またその5に戻ります。
今回のは、昔mixiに上げたのを修正して再掲したものです。 一般名ロフラゼプ酸エチル。 一見、ベンゾジとは別系統に見えますが、 れっきとしたフルラゼパム系ベンゾジです。 規格は1mgと2mg、あと細粒。 愛称は「めいら」。 発売は明治製菓。明治と言えばミルクチョコ。 メイラックスの外箱とシートは地味なので、 思い切ってミルクチョコレート包装の メイドさんにしてみました。 メイラックスという名前自体が メイド喫茶っぽいですよね。 明治製菓の娘なのでカールが大好き。将来はカールおじさんの 嫁になりたいと考えているフシ有り。 かなりの世話焼きで、クラスへの転入は最も遅かったが、 速攻で掃除やお茶会などのスクールイベントに必須要因となる。 人当たりの良い性格で話し好き。総合成績はレキソたんや わっくすよりも良いが、それを鼻にかけたりすることもない。 エステルなので水にも油にも溶けるのさ!(意味不明) 実にできた性格だが、重度の明治菓子マニアであり、 特にカールの話題を振ると一日中しゃべり続ける。 そのため、3時のお茶会のお茶請けが1か月連続でカールでも、 みんなあえてその事には触れないようにしているらしい。 メイドスキルはほとんどオールワークスレベルだが、 明治パパが大量に自社製品をくれるので、料理の腕が一向に あがらない。インスタントスープやカレーを上手に作る手際 だけは天才的というインチキメイドっぷりを発揮している。 同じクラスに姉のめど美がいる。同じサノフィ家の出身だが めど美はアボット家、めいらは明治家に養女に出ているので 同じ家に暮らしているわけではない様子。 とはいえ、何かにつけて面倒臭がりなめど美と世話好きな めいらはいいコンビで、姉妹仲は割と良好。 姉も料理下手らしく、完全栄養食のエンシュアリキッドばかり 飲んでいる。現代っ子姉妹である。 …こんな感じでどうでしょう。 この薬は、日本で販売された最後のベンゾジアゼピン系 抗不安薬です。世界的に見ても、これより後に開発された ベンゾジアゼピンは存在しません。 ただフランスでの販売時期はデパス登場より早いので、 めいらはでぱ子より年上という扱いになっております。 売上高は年間40億以上。デパスには及びませんが、国産の 抗不安薬では売り上げ2位に当たります。 ただソラナックスなどの外資系薬は正確な売り上げが不明のため、 抗不安薬全体におけるシェアは結構低いと思います。 60年代にリブリウム(=コントール)が発売されて以来30年間、 安全かつ効果的な向精神薬として、世界で開発されまくった ベンゾジアゼピンですが、もうどういじくってもより完成度の 高い薬は発見できず、90年代からは非ベンゾジアゼピン系 の睡眠薬や、SSRI等に開発の主流は移っていきました。 そんな時代の過渡期である80年代に、この薬は発売されます。 開発したのはフランスの一流メーカー、サノフィ社。 フランスでは82年に発売され、日本では明治製菓が販売権を 買い取って88年に発売されました。 メイラックスの特長は「プロドラッグ」であることでしょう。 サノフィ社はもともと、1960年代の終わりに「トランキセン」 (=クロラゼプ酸二カリウム、和名メンドン)という一風変わった ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を開発してました。 トランキセンはそれ自体では何の効果も持ちませんが、 体の中に入ると肝臓で分解され、即座に「ノルジアゼパム」と いう、ジアゼパムによく似た形に変化します。 トランキセンの抗不安効果は、このノルジアゼパムが担ってます。 つまり、分解されて初めて効果を発揮するのです。 業界用語ではこういう薬をプロドラッグといいます。 こういうギミックを施すメリットは、副作用の軽減にあります。 ノルジアゼパムは、ジアゼパムの分解物でもあります。 逆に言えば、ジアゼパムは分解されても効果が続くのです。 効き目が強いのはいいことばかりではありません。 ジアゼパム(=ヴァリウム、セルシン)はその優れた効能の影で、 眠気、体のだるさ、健忘など色々な副作用を持ってました。 それでもバルビツール等より遥かに安全だった訳ですが。 こういう弊害はジアゼパム→ノルジアゼパム→オキサゼパム という分解過程の物質が全て薬物活性を持つために起こります。 その点、トランキセンはジアゼパムの段階をすっ飛ばすことで、 経路を単純にし、その手の副作用を抑えることを狙ったわけです。 まぁ、その分だけ効果もばっちり弱くなるわけで、 せいぜい高齢者や肝疾患を持つ人々用くらいにしか使い道が ありませんでした。当然ながらヴァリウムの牙城を崩すなど 及びもつきません。 日本ではどうかと言えば、そもそも心身症の適応を取ってない為 抗不安薬であるにも関わらず、14日間しか処方できないという 不便性が災いし、早々に忘れられた薬となりました。 その後に現れたワイパックスやソラナックス、デパスなどは、 ヴァリウムより強い抗不安効果を持っています。当然副作用も 強くなるわけですが、これらの薬はこの問題を「抜けの早さ」で 解決しようとしました。体からの消失が早ければ副作用も 出にくいのは道理で、もはや何も問題はないように見えました。 ところが年代を重ねるにつれ、ベンゾジアゼピン系に別の 問題点がクローズアップされてきました。 すなわち、依存や耐性の問題です。 一日数回連日服用、効きが落ちたので用量増加。切れ味の良い 短時間系のベンゾジアゼピン系抗不安薬にこの問題は生じやすく、 長所だった抜けの早さは逆に乱用の温床となりました。 そういった背景を受け、昔ながらの長時間型抗不安薬のニーズが 高まっていきます。しかし今更効きの弱い昔の薬には戻れません。 (1)効き目が強く(ヴァリウム以上)、 (2)速効で効果を示し(ベンゾジアゼピンの必須項目)、 (3)なおかつ長く効き(依存・耐性の軽減)、 (4)さらに副作用の少ない(分解経路が単純であること) 薬物が求められました。 そこで、サノフィ社は忘れられたトランキセンに再び注目します。 薬効が弱いとはいえ、トランキセンは(2)~(4)の条件を クリアしています。じゃあ何とか効き目を強くすれば いい薬になるんじゃないでしょうか。 そう言うコンセプトで研究を重ねた結果、フッ素配合でより 抗不安効果を高めた「ロフラゼプ酸エチル」が開発されました。 カルボキシル基(-COOH)をエステル(-COOC2H5)にすることで トランキセンのもう一つの欠点、湿気への弱さも克服してます。 サノフィ社はこれを1982年、「ヴィクタン」の名称で販売しました。 日本では88年、明治製菓によりメイラックスとして販売されます。 ヴィクタンもプロドラッグで、そのままでは効果を持ちません。 体の中で分解され、「デスアルキルフルラゼパム」という物質に なって初めて効果を発揮します。これはノルジアゼパムよりも 抗不安活性や脳移行性に優れた物質で、長時間にわたり 非常に安定した効果を発揮し続けます。 1時間を切る即効性と、24時間を超える半減期を備え、 なおかつプロドラッグであることで副作用も軽減されました。 日本ではついでにメンドンでの懸念であった心身症への適応も 取り、30日投与を可能としました。 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の、進化の最終形と言えるでしょう。 それほどに優れた薬でありながら、ヴィクタン(メイラックス)の 売り上げはあまり芳しいとは言えません。 欧米では80年に登場したザナックス(ソラナックス)がDSM-IIIと セットで宣伝され、爆発的に売れました。 それに伴う依存や耐性が叫ばれると、ベンゾジアゼピン自体を マイナス的にとらえるようになり、処方のメインは依存の出ない SSRIに変更されていき、ベンゾジアゼピンは補助的にしか 使われなくなりました。そうなれば別にザナックスのままでも 特に問題はありません。 そのため、開発国のフランス以外の先進国では 承認はされてもほとんど販売されてないのが現状です。 SSRIの導入が遅れまくっている日本ではどうでしょうか。 日本ではベンゾジアゼピン系による依存や耐性の問題が 欧米に比べ深刻にならなかったせいもあり、 デパスの圧倒的なシェアを切り崩すには至っていません。 精神科の薬は薬理的効果よりもむしろ、社会的な背景により 売り上げが左右されやすいという現象があります。 残念ながらメイラックスも、ワイパックス等と同じく 「優等生だけど地味な薬」のまま終わりそうです。 |